2023年10~12月期の国内総生産(GDP)速報値は、実質で年率0・4%減と2四半期連続のマイナス成長になり、23年通年の名目GDP実額はドイツに抜かれ4位に転落した。
4位転落は為替要因が大きく悲観視する必要はないが、内需低迷の継続は深刻である。物価高を抑制し、中小企業を含め大幅賃上げをいかに実現するか、その実が問われている。
為替変動で大きく目減り
民間シンクタンクの事前予測は、平均で実質年率1・6%のプラス成長。個人消費や設備投資が3期ぶりに回復すると見込まれたが、内需の主要項目はいずれも期待外れに終わった。物価高の影響がいかに大きかったかということである。為替や物価の変動を反映し、生活実感に近い名目GDPが、23年通年で前年比5・7%増となったのも道理で、実額は591兆4820億円と過去最高を記録した。
名目GDPの4位転落(米ドル換算)は、為替変動が主因。円相場は11月に1㌦=151円台を付け、年初から20円以上も円安となるなど、ユーロよりもドルに対して下落したため、日本のGDPの方が大きく目減りしたからである。一方、ドイツはインフレ率が日本より高かったことでGDPをより大きくした面もある。過度な悲観は不要であろう。
問題は低迷する内需をいかに回復させるかである。個人消費は前期比0・2%減、設備投資も同0・1%減と振るわず、共に3期連続でマイナス。内需は全般的に低調だが、特に深刻なのはGDPの過半を占める個人消費である。
家計調査で見た消費支出は10カ月連続で前年割れ。その背景にあるのが、21カ月連続の実質賃金のマイナス、すなわち賃上げの伸びを上回る物価高の継続である。
「物価高を上回る、物価高に負けない賃上げ」の継続が求められる所以(ゆえん)だが、それをどう実現するか。対策の方向としては二つ。一つは文字通り、物価高以上の賃上げであり、もう一つは物価高の抑制である。
後者は既にその傾向が表れている。消費者物価は昨年9月以降、2%台に下落し、一時の4%を上回る状態から落ち着きを見せている。
もちろん、その背景には政府の電気・ガス料金やガソリン代の負担軽減策がある。電気・ガス料金のそれは5月使用分までだが、場合によっては延長も考慮すべきである。懸念は最近、円安が徐々に進んでいる点で、過度な円安に政府・日銀は厳正に対処してもらいたい。
春闘での大幅な賃上げについては、労使がその必要性で認識が一致している点は心強い。大手企業では、連合の掲げる「5%以上」を表明する企業も少なくない。
価格転嫁高める工夫を
30年ぶりの高い賃上げ率を実現した昨年と同等かそれ以上の賃上げを実現するには、雇用の7割を占める中小企業への波及がカギを握る。中小で増加する「人件費高騰」を理由とする倒産をこれ以上増やさないためにも、人件費を含めた価格転嫁の実効性を高める工夫、取り組みが欠かせない。