盛山正仁文部科学相が世界平和統一家庭連合(旧統一教会、家庭連合)から過去に選挙支援を受けるなど、同教団および関連団体との関係がマスコミで報じられ、野党は家庭連合の解散命令請求をした当人の盛山氏の文科相辞任または更迭を求めている。だが、問題は選挙協力や教団関係者との面会ではなく、それを隠そうとする嘘(うそ)である。
違法性のない「接点」
家庭連合および関連団体と政治家の付き合いについて、2022年7月の安倍晋三元首相銃撃事件を契機にマスコミが「接点」として批判的に報道し、野党が所属議員の「接点」を公表して自民党にも「接点」の調査と公表を迫った。
安倍氏襲撃で逮捕された男が、家庭連合信者である母親の高額献金を恨み参院選応援演説中の同氏を狙ったと報道されたことから、元首相暗殺という衝撃と共に、教団の献金トラブルに遭った元信者ら被害者に注目が集まった。「接点」によるイメージダウンを政治家が恐れる状況が醸成された。
だが、公表された「接点」は関連団体のイベントへの出席あいさつ、祝電、参加費、出版物の購読費という程度だ。また、教団信者や関連団体の職員らの選挙協力も問題であるかのように批判的な報道が繰り返されていたが、1960年代から行われていたといい、新事実でもない違法性のない活動だった。
これに閣僚の更迭までして「関係断絶」の証しとした岸田文雄政権の矛盾は、今年になって跳ね返ってきている。半世紀余りも衆参の国政選挙、主要地方選で応援してきた関係は当然、違法ではなく、憲法が保障する国民主権たる参政権の行使にほかならないとみるべきだが、岸田政権では関係断絶をもって罪悪視した。
このため大手紙、週刊誌、テレビなどで岸田氏、林芳正官房長官、盛山氏と教団関係者との面会写真などが何枚も報じられ、疑惑視されている。盛山氏は地元選挙区で開催されたイベントで多くの聴衆と一緒に記念写真に収まるなど、動かし難い関係だったとみえる。国会審議で野党の追及に「うすうす思い出した」と一度は答弁したものの、一転して「覚えていない」「選挙応援を受けていたかを知りうる立場にはない」などと否定している。
自民党をはじめとする各党の政治家には不祥事により逮捕される例が後を絶たず、自民党派閥パーティーによる収益を政治資金収支報告書に一部記載しなかった「裏金」問題でも逮捕者を出したばかりだ。
これら政治家の不正は教団関係者との軽微な「接点」よりはるかに重い問題だ。しかし、岸田政権のこれまでの「接点」への対応は、各国要人らも参加した教団関係団体のイベントへの出席で閣僚を更迭するほど過剰だった。その極みは拙速な宗教法人法解釈変更による教団の解散命令請求と言えよう。
差別の不快な色眼鏡
盛山氏が文科相を辞任しないのは、ある意味で当然のことであり、教団の選挙応援に違法性はない。むしろ選挙協力が「ない」という嘘こそ、不快な教団を差別する色眼鏡と言えよう。