能登半島地震による大量の災害ごみが地元住民を悩ませている。被災地の復旧・復興を進めるため、国はもちろん、全国の自治体も災害ごみの処理に協力すべきだ。
珠洲市で132年分
石川県は、能登半島地震による家屋の解体などで出る災害ごみが推計244万㌧に上るとしている。全壊、半壊とみられる建物約5万棟のうち約2万2000棟が解体されるとの想定に基づくものだ。年間ごみ排出量の7年分に相当し、奥能登地域が全体の6割を占めるという。市町別では珠洲市が57万6000㌧と最も多く、年間排出量の132年分に相当する。
県は2025年度中の処理完了を目指す方針を示した。だが道路の寸断や人手不足などで、なかなか処理が進まないのが現状だ。被災地の全市町に災害ごみの仮置き場が設置されたが、地震で車が壊れたり、遠方に避難したりして片付けに着手できない人も多い。さらに、奥能登地域は高齢化が進んでいる。ボランティアは現在、日帰りで短時間の作業しかできないが、宿泊場所の確保などを急いで支援を強化する必要がある。
大量の災害ごみは復旧・復興の妨げとなりかねない。16年の熊本地震では、約311万㌧の災害ごみが発生。処理完了までに約2年間かかった。津波による堆積物など約3100万㌧の災害ごみが生じた11年の東日本大震災では、処理に3年を要した。地元自治体だけで対処するのは難しい。国の支援はもちろん、全国の自治体の協力が求められる。
県は災害ごみをダンプカーなどで県内外の処理施設に運ぶほか、一部は海上輸送する。このためには道路や港湾の復旧が急がれる。県外の自治体は災害ごみの受け入れに積極的に応じてほしい。
負担を軽減するには、リサイクルで災害ごみを減らすことも欠かせない。東日本大震災では福島県を除き、コンクリート片などの災害ごみの8割以上が再生利用された。国は15年に廃棄物処理法を改正し、災害ごみは分別して再利用し、最終処分場に持ち込む量を極力減らすとの方針を明記した。過去の大規模災害での知見を活用したい。
地震で全半壊した空き家の処理も大きな課題だ。所有者不明の場合、裁判所が選任した管理人が公費解体を申請して処分するが、これまで自治体が裁判所に申し立てるには、動産の有無の確認などが必要で、熊本地震では熊本県内で壊れた約3万5000棟の公費解体完了まで3年近くかかった。
これに対し、23年4月施行の改正民法で導入された管理制度は、動産を確認しなくても管理人を選任してもらうことができる。倒壊した空き家が復旧の妨げとなるケースもあり、新たな制度を活用して復興の加速につなげたい。
困った時はお互いさま
能登半島地震のような大災害は、日本のどこで起きてもおかしくない。近い将来、首都直下地震や南海トラフ地震が発生するとも予測されている。
「困った時はお互いさま」の精神で、被災地の復旧・復興に全国で協力したい。