【社説】BRICS拡大 懸念される反米色の強まり

ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカで構成する新興5カ国(BRICS)に2024年1月、中東の産油国など5カ国が新規加盟し、加盟国は10カ国になった。

しかし、ウクライナ侵略を続けるロシアや覇権主義的な動きを強める中国が主導するBRICSの拡大に対しては懸念する声が強い。

将来像には不透明感

新たに加盟したのは、アラブ首長国連邦(UAE)、イラン、エジプト、エチオピア、サウジアラビアの5カ国。当初はアルゼンチンも加わる予定だったが、23年12月に就任した右派のミレイ大統領は加盟しないことを決定した。

拡大前のBRICS5カ国は世界人口の4割を占め、00年には8%にすぎなかった世界経済におけるシェアは22年に26%になった。BRICSを主導する中露両国には、加盟国拡大を通じて新興・途上国「グローバルサウス」を代表する枠組みに育て上げ、米欧中心の国際秩序に対抗する思惑があろう。

南アフリカのパンドール国際関係相は「BRICS加入への関心を伝えてきた国は34カ国に達する」と述べた。こうした国々の存在は、特にウクライナ侵略で西側諸国から経済制裁を受けるロシアにとって、自国への支持と映るに違いない。24年10月にはロシア中部カザンでBRICS首脳会議が開かれる。

しかしブラジルのルラ大統領は23年8月の首脳会議の際、BRICSは「米国や先進7カ国(G7)に対抗するためのものではない」と述べた。領土問題で中国と対立するインドも、中国主導でBRICSの反米色が強まることを警戒している。

さらにサウジアラビアのカサビ商業相が、24年1月にスイスで開かれた世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)で「正式にはまだ加盟していない」と述べるなど、BRICS拡大を巡っては混乱も生じている。その将来像には不透明感が漂っていると言えよう。

BRICSが一枚岩となれないのは、共通する政策や理念が欠けているからだ。ブラジル、インド、南アフリカは民主主義国であり、共産党一党独裁体制の中国や強権体制を維持するロシアとは違う。

中露はBRICSのほか、上海協力機構(SCO)といった枠組みの影響力拡大を図っている。だが力による一方的な現状変更を進める中露の勢力が強まることは、国際情勢の一層の不安定化にもつながりかねない。

一方、4カ国枠組み「クアッド」のメンバーである日本、米国、オーストラリア、そしてインドは、自由、民主主義、基本的人権、法の支配といった基本的価値観を共有している。4カ国は23年8月、豪東部海空域で合同海上演習「マラバール」を行った。強引な海洋進出を進める中国を念頭に「ルールに基づく海洋秩序」を維持するため協力していく必要がある。

民主国の枠組みで牽制を

民主主義陣営はクアッドのほか、米英豪の安全保障枠組み「AUKUS(オーカス)」や、日米韓、日米比などの枠組みを活用し、中露に対する牽制(けんせい)を強めるべきだ。

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