最大震度7を観測し、石川県能登地方を中心に甚大な被害をもたらした能登半島地震の発生から1カ月となった。
石川県全体で災害関連死15人を含む死者238人を出し、今も1万4600人以上が避難生活を余儀なくされている。仮設住宅の建設と道路、水道など生活インフラの復旧に全力を挙げるべきだ。
依然4万戸で断水続く
マグニチュード7・6の地震の被害状況が次第に明らかになるにつれ、その深刻さが浮き彫りになっている。死者を出す大きな原因となった家屋の倒壊など住宅被害は、約4万6000棟に上る。
土砂崩れによる道路の寸断は多数に上っている。幹線道路の一つで、能登半島を一周するように走る国道249号は、損傷が大きく、復旧に数年かかるとの見通しだ。
停電は能登半島の全地域でほぼ解消されたが、なお4万戸で断水が続いている。七尾市など遅い所では復旧までさらに1カ月近くを要するとみられる。生活を再建し、復興へ歩み出すためには、インフラの復旧をまず急がねばならない。
岸田文雄首相は、北陸4県で民間賃貸住宅など約2万3700戸を確保したとしている。県は3月末までに応急仮設住宅約3000戸の建設に着工し、公営住宅なども合わせ1万3000戸を提供する。
しかし寒さが厳しくなる中、2次避難の呼び掛けにも躊躇(ちゅうちょ)する被災者が少なくない。仕事や家族、教育環境など事情はさまざまだが、一時的とはいえ、住み慣れた土地を離れることへの不安を払拭できないためと思われる。人の結び付きの強い地域だけに、共同体の崩壊を恐れる心情もあるだろう。
人口減が進む土地で一時的にせよ共同体が壊れた場合、その回復は困難が予想される。災害関連死を招くような環境の劣悪化を防げれば、住み慣れた土地から動かないという選択も十分尊重されるべきである。
そのためには仮設住宅を建設するにしても、これまで住んでいた地域から遠くない所で、地域の人々が固まって住めるよう配慮することが必要になる。岸田首相が他県も含めた住宅を確保したことは、地元の人々の心情をよく汲(く)み取ったものとは思われない。
生業の再建を急がなければならない。しかし、主産業である農業、漁業、観光業は大きな打撃を受けている。とりわけ海岸の地盤が隆起し、漁港が使えないなど漁業被害は大きい。その復旧策を早く講じたい。
政府は観光振興のための「北陸応援割」の実施を明らかにしている。北陸地方への支援として歓迎したい。ただ能登地方に関しては、まず道路や水道の復旧、そして温泉や旅館、ホテルなど宿泊施設の復旧が第一だ。
ボランティアは戦略的に
ボランティアの動きも既に始まっているが、被災地の受け入れ態勢が十分整っていないのが現状だ。
今後の長期で大規模な復旧・復興策を念頭に、奥能登の入り口の七尾市などに受け入れ拠点を設け、戦略的に進めていく必要がある。