Homeオピニオン社説【社説】施政方針演説 信頼回復への本気度を疑う

【社説】施政方針演説 信頼回復への本気度を疑う

岸田文雄首相は、今年1年間の政府の基本方針や政策を明らかにする施政方針演説を行った。しかし、能登半島地震への対応、経済回復、政治改革、外交・安全保障などを総花的に網羅し、取り組み姿勢を語ったにすぎなかった印象だ。

議論主導の気概ない

今国会で最初に取り組むべき課題は、失われた自民党政治への信頼回復のはずだ。その具体策や全容解明への意気込みを語らず、「先頭に立つ」と述べる程度では本気度が疑われる。「信なくば立たず」であることを肝に銘じなければならない。

今年の通常国会は、首相の施政方針演説を召集日に行わず、後回しにするという異例のスタートとなった。自民党派閥の政治資金パーティー「裏金」事件をテーマとする衆参両院での予算委員会集中審議を優先させたからだ。それほど「政治とカネ」の問題は冒頭から野党攻勢の案件になっている。

岸田首相は「自民党総裁として心からお詫(わ)びする」とし、「自民党は変わらなければならない」と述べた。その上で党の「政治刷新本部」による「中間取りまとめ」を紹介し、「必ず実行する」との姿勢を示した。

だが、再発防止に向け政治資金規正法のどこをどう改正するのか。「各党各会派との協議を経て実施していく」と述べた程度だ。派閥を解消した政策集団が「カネ」と「人事」から決別できるのか。「裏金」の使途を全容解明する意思があるのかについては触れなかった。野党と国民にもっと詳細を語り、自ら国会での議論を主導する気概が感じられない。

首相は「国民の信頼回復を果たして政治を安定させ、その上で重要政策を実行していく」と言うが、早急に取り掛からねばならない重要政策は多い。政治の安定に向けて全力を挙げるべきである。

その重要政策の一つが 能登半島地震を含め激甚化する自然災害への対処だ。首相は「防災・減災、国土強靭(きょうじん)化」の取り組みを挙げ、平時から「安全・安心」を守り抜くとの思いを語った。だが、欠落しているのは緊急時への備えだ。それがなければ「安全・安心」は保障されないはずだ。

岸田首相は「先送りできない課題」として憲法改正を挙げ、自民党総裁として「自分の総裁任期中に改正を実現したいとの思いに変わりはなく、議論を前進させるべく、最大限努力したい」と語った。だが、何故改憲が必要なのかの訴えがない。それでは「最大限の努力」をしたことにはならない。

疑問なのは「総裁任期中に改正を実現したい」と述べながら「今年は、条文案の具体化を進め、党派を超えた議論を加速していく」と続けて語っている点だ。9月の総裁選の再選を前提に改憲のスケジュールを組み立てていないか、首相に問いたい。

野党は建設的追及を

国会は令和6年度予算案や58本に及ぶ政府提出法案などを抱えている。

「政治とカネ」で結集軸を得た野党は、政局に持ち込むことを狙いとするのでなく、建設的姿勢で政府・与党を厳しく追及すべきである。

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