【社説】北の恫喝外交 安易な融和路線に転じるな

北朝鮮の挑発威嚇的な動きが続いており、朝鮮半島の緊張が高まっている。金正恩朝鮮労働党総書記は2023年暮れの党中央委員会総会で、韓国とは「敵対的な国家関係、戦争中の交戦国関係」にあると主張し、同じ民族同士の平和的な南北統一を掲げたこれまでの対韓政策を「転換」すると宣言した。

露骨な韓国敵視政策

24年1月には韓国を「われわれの主敵」と断定し「われわれの主権と安全を脅かそうとするなら躊躇(ちゅうちょ)なく完全に焦土化する」と強調。最高人民会議では、憲法を改正し、韓国を「第1の敵対国」と位置付けるべきだと述べ、南北対話の窓口機関である祖国平和統一委員会など三つの組織の廃止も決めた。韓国敵視の姿勢を誇示するため、3日連続で黄海上の北方限界線付近で激しい砲撃を実施した。

ミサイル発射の動きも活発だ。23年12月に新型大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星18」、24年1月には極超音速弾頭を搭載した固体燃料式の中長距離弾道ミサイルを発射した。

さらにロシアへの接近を強めている。23年9月に正恩氏が訪露し、4年5カ月ぶりの首脳会談では対米共闘強化で一致。次いで24年1月の崔善姫外相の訪露を受け、プーチン大統領は早い時期の訪朝の意向を示した。

一連の北朝鮮の動きは強いメッセージである。露骨な韓国敵視政策は、4月の韓国総選挙を視野に入れたものだ。対北融和を進めた文在寅政権とは対照的に、日米との連携強化を掲げ、北朝鮮に厳しく対処する尹錫悦政権の路線は戦争に繋(つな)がる危険を孕(はら)むと韓国側を威嚇し、尹政権の追い落としを狙っている。

ミサイル発射は米本土核攻撃能力の保有を誇示し、バイデン政権になり途絶えた米朝協議を促すものだ。次期米大統領が誰になろうとも北朝鮮の脅威をこれ以上無視できないと悟らせ、早期の協議再開に漕(こ)ぎ着けたいとの焦りが感じられる。

対露接近は、ウクライナ侵略を続けるロシアへの武器弾薬提供の見返りにミサイル技術供与を求めるものだ。プーチン氏訪朝で露朝の強固な関係をアピールし米国を揺さぶると同時に、支援を渋らぬよう中国を牽制(けんせい)する意図も込められていよう。

脅威を煽(あお)る一方、北朝鮮は奇妙な動きも見せている。平素の激しい対日批判から一転、正恩氏は能登半島地震に際し岸田文雄首相に丁重な見舞いの電報を送ってきた。支持率低迷に苦しむ岸田政権が拉致問題解決に関心を示している動きを読み、日本に秋波を送って経済支援獲得を目論(もくろ)んでいると思われる。

北朝鮮は、日米韓や中露が結束して自国を抑え込むことを阻むため、これまでも巧みな分断工作を行ってきた。今回も尹政権の対北強硬政策を阻止するとともに米朝関係を改善し、さらに日本を引き寄せ、日米韓の足並みを乱そうとするものである。中露を競わせる底意もある。

日米韓は危険な野望阻め

脅威を煽る策動に乗せられ、各国が安易な融和政策に転じれば、北朝鮮の術策に陥ってしまう。日米韓は引き続き北朝鮮の動向を注視するとともに意思疎通と連携を強化し、正恩氏の危険な野望を阻まねばならない。

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