石川県能登地方を中心に甚大な被害をもたらした能登半島地震の発生から3週間が経過した。石川県ではなお1万5000人以上が避難生活を送っている。厳しい寒さの中、災害関連死を防ぐために2次避難が勧められているが、進んでいない。将来の生活再建へのビジョンと道筋の提示が求められる。
地元離れる避難への不安
今回の地震で石川県では232人が亡くなった。そのうちには災害関連死14人が含まれている。2011年の東日本大震災では災害関連死は3794人に上った。16年の熊本地震では221人、18年の西日本豪雨では82人となっている。
災害関連死は70歳以上の占める割合が高い。能登半島は高齢者の多い地域で、避難所や自宅に避難する高齢者の健康が心配だ。この季節、とくに低体温症に注意しなければならない。中には車中泊をする人もいるが、エコノミークラス症候群などに注意してほしい。地域の医療従事者、医療ボランティアの目配りによって、ケアから漏れる人がないようにしたい。
最も被害の深刻な奥能登地方の輪島市や珠洲市では道路が寸断され、最大で24地区3345人が孤立状態に置かれた。県は孤立集落は実質的に解消し、21日時点で孤立集落の被災者は14人にまで減少したと発表した。
災害関連死を防ぐため、県は避難所などに暮らす被災者に、金沢など県南部のホテルや旅館への2次避難を勧めている。しかし県によると、2次避難をした人は21日時点で約2600人と2割にも満たない。
2次避難を躊躇(ちゅうちょ)する理由はさまざまだが、一番大きいのは地元を離れることへの不安だ。地域共同体の繋(つな)がりが強い地域ということもあり、集落の共同体が崩れてしまうのではないかという心配を抱く人もいる。
被災地は寒さが厳しく雪も降る地域であり、しかも現在はまだ水道などのライフラインが復旧していない。こうした中でも簡単に動く気持ちになれないのは、住み慣れた地元への愛着の深さもある。
地元を離れる決断を促すには、2次避難がどれくらいの期間となり、いつになればライフラインが復旧し、仕事を再開して生活を再建できるのか、その道筋をできるだけはっきりと示す必要がある。
避難者の大半は、住居が被害を受け住めない状況になっている。仮設住宅がいつどこで建設されるかを伝え、入居できるよう保証することも重要だ。
地震は、伝統工芸、観光、農業、漁業など能登地方の中心産業を直撃した。輪島市では輪島塗の工房や観光名所の朝市通りが壊滅的被害を受けた。輪島市や珠洲市の外浦地域は、海岸の隆起によって漁港が大きな被害を受け、船が出せなくなった所も多い。観光名所である棚田など大きな被害が出ている。全国的に知られた温泉も復旧・再開の見通しは立っていない。
復興に向け集落維持を
それら産業の立て直しには時間がかかるが、まずは集落の維持や生活の再建へのビジョンと道筋を示すことが、2次避難と復興への態勢づくりのためには何より必要だ。