日本共産党大会で、委員長が志位和夫氏から田村智子氏に交代した。23年ぶりの委員長交代となる。志位氏は空席だった議長に就任し、不破哲三前議長が中央委員を退任した。
世代交代を打ち出し、結党以来初の女性党首を登用することで退潮が顕著な党勢を挽回したい思惑があろう。だが、綱領・規約に基づいて活動する革命政党に路線や体質の変化はなく、看板の掛け替えにすぎない。
低下する理論のレベル
志位氏は「今年でちょうど70歳になる。新しい世代にバトンタッチするのが良いと考えた」と委員長退任の理由を語った。しかし、党員数は25万人に激減し、党財政の主要な基盤の「しんぶん赤旗」購読者数も85万人に落ち込み、低落傾向に歯止めがかからないため、交代論が昨年夏頃からくすぶっていた。
かつて「ソフト・スマイル」戦術で党勢を盛り上げた経験から、田村新委員長は党のイメージを刷新する旗振り役となることを期待されていよう。ただ、「われわれは組織政党だ。代表が交代しても大きく変わることはない」と党幹部が語るように、志位、田村両氏と小池晃書記局長を主軸とした党運営に変化はないだろう。
志位氏が強調した「天皇制」の容認や自衛隊の活用論、日米安保条約廃棄の凍結などの路線も継承される。女性の立場からジェンダー平等論など女性の権利を拡大する主張をしてきた田村氏は、志位氏では浸透しにくかった層に訴えを広げるだろう。だが、不破氏のようにマルクス・レーニン主義(科学的社会主義)を現実問題に合わせて解釈し説得する能力があるかは大いに疑問だ。
不破氏はこれまで、常任幹部会委員・社会科学研究所所長として理論面から党の主柱となってきた。今回の人事により、指導部から外れ党運営に関わらなくなることで、党の理論のレベルが下がり、党執行部の指導力と求心力が弱まる可能性は否定できない。
不破氏退任で気掛かりなのは、1950年代の武装闘争の責任を分派(所感派)に押し付けた宮本顕治元議長の主張に党史が固定されてしまわないかということだ。東大ポポロ事件(52年)という学生による暴力事件を体験した不破氏は、実兄の上田耕一郎氏と『戦後革命論争史』を著したが、宮本氏に「自己批判書」を書かされて以来、党史修正の試みはなかった。
その宮本氏は暴力革命をも是認する「敵の出方論」を打ち出した。林芳正官房長官は「公安調査庁は共産党を破壊活動防止法(破防法)に基づく調査対象団体としている」と語り、暴力を使用するか否かは敵の出方で決まるとする共産党への警戒を今も続けていることを示した。
たとえ、「敵の出方論」という言葉を使わないことにし、「共産党は暴力とは無縁である」と田村氏が繰り返しても信用されない。さらに、上意下達の組織原則である「民主集中制」を改める兆しも全くない。
前途多難な野党共闘
大会決議に野党共闘の「再構築」を盛り込んだが、国民の常識からかけ離れた体質や路線に変更がなければ前途は多難だ。