【社説】米大統領選 世界平和へ問われる指導力

2024年は、きょう投開票の台湾総統選をはじめ、3月のロシア大統領選や4月の韓国総選挙など、日本の外交・安全保障政策を左右するような選挙が海外で行われる。中でも11月の米大統領選は、国際情勢に及ぼす影響が大きい。

前職と現職の争いか

4年に一度の米大統領選は11月5日に行われる。野党共和党の候補者指名争いでは、トランプ前大統領が独走状態となっている。与党民主党では現職のバイデン大統領が立候補を表明した。大統領選はこの2人の争いとなる公算が大きい。ただ、両者とも懸念材料を抱える。

西部コロラド州の最高裁は23年12月、大統領選でトランプ氏に同州での出馬資格を認めない判決を下した。21年1月の連邦議会襲撃事件を踏まえた判断で、国家に対する反乱や暴動に関与した者は「国または州の官職に就けない」とする憲法の規定を適用した。

トランプ氏は連邦最高裁に上訴したが、資格剥奪の司法判断が他の激戦州に広がれば選挙結果を左右する事態となる。一方、バイデン氏は支持率が低迷しているほか、高齢で認知機能の低下も指摘されるなど「2期目を全うできるのか」と不安視されている。

大統領選の結果は、米国内だけでなく国際情勢にも大きな影響を与える。22年2月にロシアによるウクライナ侵略が始まって以降、米国からウクライナへの軍事・経済支援額は1100億㌦を超えており、「米国第一」を掲げる共和党支持層を中心に反発が広がっている。トランプ氏が大統領に再選された場合、ウクライナ情勢にどのように対処するかが焦点となる。

ロシアの侵略は国際法に違反しており、民間人虐殺などの戦争犯罪も生じている。ウクライナを見捨てることがあってはならないのは当然だ。ただバイデン氏は侵略前、ウクライナへの米軍派遣を繰り返し否定し、このことがロシアの攻撃を誘発したとの見方もある。共和党支持者には、トランプ氏が大統領であればウクライナでの戦争は起きなかったとの思いもあろう。

米国はウクライナ情勢だけでなく、イスラエルとイスラム組織ハマスとの戦闘にも対処しなければならない状況だ。大統領が選挙運動に時間を取られる中、東アジアの中国や北朝鮮の動向も気掛かりだ。

中国の習近平国家主席は「新年の辞」で「祖国の統一は歴史的必然」と改めて台湾統一への意欲を強調。北朝鮮軍は24年に入って韓国領北方の黄海上で砲撃を行うなど挑発を強めている。世界の平和と安定に向け、米大統領の指導力が問われていることを大統領選に出馬している人たちは自覚する必要がある。

左右の対立克服が課題

米国では現在、移民や人種、LGBTなどの問題で左右の対立が激化している。米スタンフォード大フーバー研究所のビクター・デービス・ハンソン上級研究員は、本紙の新春特別インタビューで大統領選について「今回ほど混沌とし、二極化した選挙は見たことがない」と述べている。左右の対立を克服し、米国の安定と発展につなげることも次期大統領の大きな課題だ。

spot_img
Google Translate »