【社説】中国の海洋進出 危機感高め米と緊密な連携を

2024年も、台湾を含む東シナ海や南シナ海で覇権主義的な動きを強める中国への対応に苦慮する一年となりそうだ。

中国の習近平国家主席は「新年の辞」で「祖国の統一は歴史的必然」と改めて台湾統一への意欲を強調した。1月13日の台湾総統選で誰が新総統に選ばれるとしても、中国は台湾への圧力を強めるとみていい。

「毛沢東超え」目指す習氏

中国では不動産不況が長引く中、国民の不満をそらすため、対外的に強硬な態度をますます鮮明にする恐れがある。また習氏は「建国の父」毛沢東が達成できなかった台湾統一を成し遂げ、毛を超える地位を目指しているとの見方も出ている。

安倍晋三元首相は「台湾有事は日本有事」と述べた。また自民党の麻生太郎副総裁は、中国が台湾に侵攻した場合、安全保障関連法が定める「存立危機事態」に認定し、限定的な集団的自衛権を行使することもあり得るとの認識を示している。日本は台湾情勢への危機感を高め、米国と緊密に連携して対処する必要がある。

中国は南シナ海でも強引な海洋進出を続けている。23年12月にはスカボロー礁(中国名・黄岩島)付近で、中国海警船がフィリピン水産当局の船舶に少なくとも8回にわたって放水銃を使用し、比船の通信・航行機器が被害を受けた。アユンギン(中国名・仁愛)礁の拠点に物資を運ぶ比船にも、中国船が放水銃を使用し、体当たりしたという。

フィリピンは南シナ海で中国と領有権を争っている。オランダ・ハーグの仲裁裁判所は16年7月、南シナ海での中国の主権を否定する判決を下した。しかし、中国は判決を「紙くず」と切り捨てて「法の支配」をないがしろにしているのが現状だ。

米比両国は23年2月、比国内で米軍が利用できる拠点を4カ所増やし、計9拠点とすることで合意した。一方、岸田文雄首相は23年11月、フィリピンのマルコス大統領との会談で、「同志国」を対象とした「政府安全保障能力強化支援(OSA)」を活用し、沿岸監視レーダーを供与することで一致。自衛隊と比軍の往来に関する「円滑化協定(RAA)」締結に向けた交渉開始でも合意するなど、フィリピンとの「準同盟」構築に力を入れている。日米比の枠組みを、日米豪印の「クアッド」や日米韓の枠組みと共に中国への牽制(けんせい)を強めるために生かすべきだ。

中国が一方的に領有権を主張する沖縄県・尖閣諸島を巡っては、23年に中国海警船が尖閣周辺の領海外側の接続水域で確認された日数が352日に上り、2年連続で過去最多を更新。領海に侵入したのは42日で、13年の54日に次ぐ多さとなった。特に3月30日から4月2日に過去最長の80時間以上にわたって領海内にとどまり、日本漁船に近づこうとする動きを見せたことは、領有権主張を正当化する試みだと言えよう。

尖閣の実効支配強化を

日本は尖閣の実効支配を強化すべきだ。公務員の常駐化や、灯台、気象観測所の設置などを急ぐ必要がある。中国が尖閣周辺の排他的経済水域(EEZ)内に設置した海上ブイも、すぐに撤去しなければならない。

spot_img
Google Translate »