2024年は元日早々、最大震度7の能登半島地震が発生するという厳しいスタートとなったが、昨年以上の賃上げで経済の好循環を実現し、内需主導の経済を定着させる年にしたい。
円高・ドル安が進むか
昨年は記録的な値上げラッシュの1年だった――。帝国データバンクによると、食品メーカーなど主要195社による食品の値上げは計3万2396品目で「バブル崩壊後の30年で例を見ない」規模となり、「異常」と言われた22年(2万5768品目)を25%以上も上回った。
主因は円安を背景にした原材料価格や光熱費などの高騰。円は年初の1㌦=130円台から11月中旬には151円台に下落し、物価高に拍車を掛けた。
昨年の春闘賃上げ率は、連合集計で3・58%と1993年以来、30年ぶりの高水準となったが、賃上げを上回る物価高が続き実質賃金は最新の10月で前年同月比2・3%減と19カ月連続のマイナス。10月の消費支出も同2・5%減と8カ月連続のマイナスで、消費者は買い控え傾向から抜け出せないでいる。2023年7~9月期国内総生産(GDP)はマイナス成長に転落してしまった。
24年はどうか。物価高を招いた主要因の円安は修正が進み、円相場は年末にかけて140円台に戻してきた。今年は米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げから利下げに転じる一方、日銀がマイナス金利解除に踏み切るのも時間の問題とみられ、日米金利差縮小を意識した円高・ドル安が基調的に進むとみていいだろう。
為替による円安要因がなくなることから物価高も落ち着く。現に消費者物価の上昇率は昨年9月以降、前年同月比2%台に下がった。食品値上げも昨年11月は131品目、12月も677品目で、今年は大幅に減少する見込みである。昨年のような消費を落ち込ませる家計の負担感の高まりは収まりそうである。
問題は昨年と同等か、それ以上の賃上げが実現するかだ。政府は24年度予算で賃上げを後押しする予算措置を施すが、肝心なのは企業の対応である。
経団連の十倉雅和会長は24年春闘について「熱量と意気込みは23年に負けない。成果も当然上回っていくことが望ましい」と述べ、前年を上回る賃上げの実現に自信を示す。
幸い、企業収益は好調で賃上げや設備投資の原資は十分なはず。経済同友会の新浪剛史代表幹事は、日本の競争力低下と賃金水準の停滞には相関関係があるとして「賃金を上げなければ良い人材は確保できない」と賃上げの必要性を強調する。企業はそのような意識で設備投資と同様、好循環の起点でもある賃上げに積極的に臨んでほしい。
「24年問題」を成長機会に
日銀のマイナス金利解除は24年春闘での賃上げ動向を確認した後の4月というのが大方の予想である。その後には大規模緩和政策の「出口」を見越した修正策が段階的に進む。
企業としても成長を意識した対応を一段と迫られることになる。4月から残業規制が強まる「2024年問題」も、生産性や効率性を高める大きな機会と捉え前向きに対処したい。