【社説】新年の外交・安保 首相は3文書実現に指導力を

今年も米中対立の構図は変わらず、米国のバイデン政権は引き続きウクライナやパレスチナ問題への対処に追われよう。米国はオバマ政権以降、同時二正面対処が困難になっている。しかも今年は大統領選挙の年だ。内政に関心が集中し、中国への備えは手薄になりがちだ。

装備品の価格が上昇

そのためバイデン政権は対話重視の対中路線を継続させる一方、国防費を増額。またアジア諸国との関係を強化し、結束によって自らの力の足らざるを補おうとしており、日米豪印4カ国の「クアッド」や日米韓の防衛協力に加え、日米比の枠組み整備も進むであろう。

台湾有事は日本有事でもあり、アジア域内諸国との戦略的な連携を深め、協力して中国の膨張侵略を阻止することは、わが国の安全保障体制を強化する上でも重要な取り組みだ。日本は米国の動きに追随するだけでなく、アジア太平洋地域における多国間協力の枠組みづくりを主導すべきである。

具体的にはクアッドに加え、ベトナム、さらにインドネシアとも戦略的協力関係を強めることだ。米英豪3カ国の「AUKUS(オーカス)」や、カナダ、ニュージーランドも加わる情報共有枠組み「ファイブアイズ」への参加も視野に入れる時期に来ている。それにはスパイ防止法の制定が必要だ。経済安保強化の観点から「セキュリティー・クリアランス(適性評価)」制度の導入も急がねばならない。

一昨年暮れに岸田政権が安保関連3文書を改定し、防衛力強化の方針を打ち出して1年余が経過した。反撃能力については長射程ミサイルの早期取得や射程延伸の事業が進んでおり、引き続き早期戦力化に努めるべきだ。「能動的サイバー防御の導入」に向け、法整備の検討作業などを加速させる必要もある。

2024年度末には、陸海空3自衛隊の部隊を一元的に指揮する常設の統合作戦司令部が創設される予定だ。自衛隊と米軍の連携協力体制を強化する大事業である。改編に伴い、日米防衛協力の指針(ガイドライン)の改定も検討すべきであろう。

一方、防衛費は23年度からの5年間で43兆円と定められた。だが、円安や物価高で装備品価格が上昇している。岸田文雄首相はこの金額の範囲内で防衛力整備を行う考えを示したが、効率化や合理化の徹底だけでは限界がある。目指す防衛力の確保には、無駄の排除に取り組むと同時に金額を見直すことが必要ではないか。

財源となる増税の開始時期についても24年度税制改正大綱での決定が見送られ、安定財源の確保は宙に浮いたままだ。これらの問題の解決には、強い政治の指導力が求められる。支持率低落に苦しむ岸田政権だが、安保は国家百年の計である。首相には自ら決定した3文書の内容を実現すべく奮起を促したい。

挑発への警戒監視強化を

米大統領選がある今年は、米国の対応力低下の隙を突き、中朝やロシアが挑発的行動に出る危険が高まる。政府は米国や同志国との連携や情報交換を密にして危機管理に万全を期し、自衛隊は警戒監視態勢を一層強化する必要がある。

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