今年はロシアによるウクライナへの軍事侵攻が続き、イスラエルではイスラム組織ハマスによる大規模な奇襲テロ攻撃が起きた。
ハマス排除のためイスラエル軍はパレスチナ自治区ガザで地上作戦を開始し、世界にウクライナ危機に上乗せして暗い影を落とした一年だった。
欧米に「ウクライナ疲れ」
侵略もテロも許されない主権侵害であり、国際法秩序を破壊する行為である以上、何としても阻止しなければならない。しかし、そのためには巨額の予算と多くの犠牲を伴うことから、国際社会は支援の継続に忍耐と覚悟が問われている。
ところが、秋を過ぎる頃から欧米諸国では「ウクライナ疲れ」が見て取れるように表れてきた。今月、ウクライナの最大支援国である米国では、追加支援のための緊急予算が議会で承認されなかった。
下院で多数派になった野党共和党は、財源が底を突く中でバイデン大統領の決定した追加支援に対して慎重な姿勢を示している。欧州連合(EU)でもハンガリーの反対により追加支援が承認されていない。
ウクライナのゼレンスキー大統領は危機感を表明し、年明けに先送りされた米国やEUの追加支援の承認に望みをつないでいる。このまま支援の手を緩めれば持久戦に持ち込むロシアの思惑通りになってしまう。
「力による現状変更」を止めるにも力はいる。だからこそ、5月に広島で開催された先進国首脳会議(G7サミット)はゼレンスキー氏を迎え、首脳声明でロシアの侵略を「可能な限り最も強い言葉で非難」し、ウクライナに対して「外交的、財政的、人道的、軍事的支援を強化する」と誓った。
声明も力の裏付けがなければ紙片のままだ。だが、世界最大の国土を有する資源大国であり、国連安全保障理事会常任理事国のロシアが侵略国となった事態は深刻だ。ウクライナ軍の反転攻勢に期待した空気もあったが、同国東部のロシア軍占領地域は地雷原と塹壕(ざんごう)によって防御を固められ、戦況は膠着(こうちゃく)状態のまま厳冬期を迎えた。
弾薬や無人機を消耗したロシアは北朝鮮、イランの反米2カ国の支援を取り付けており、特に北朝鮮とは4年半ぶりに訪露した金正恩朝鮮労働党総書記とプーチン大統領が会談するなど蜜月関係を築いた。核・ミサイル開発を示威する発射実験に拍車が掛かるなど北朝鮮の軍事技術向上が懸念される。
克服には結束が重要
さらに、10月にはイランの支援を受けるハマスがイスラエルを奇襲した。ガザ地区を実効支配し、パレスチナ人を“人間の盾”としながら地下要塞を拠点に軍事化したハマスの掃討には非情な一面があることも確かだ。これを批判する世論の高まりにも民主主義国は翻弄(ほんろう)されやすく、奇襲テロの被害を受けたイスラエルに厳しい目が注がれた。民主主義国では、何事にも反対論があり是非が論じられるのはやむを得ない。
だが、侵略の阻止、テロとの戦いという大きな試練を克服するには、忍耐強い結束が重要になることは言うまでもない。