政府は、防衛装備移転三原則とその運用指針を改定した。三原則については、防衛装備品の海外移転は「力による一方的な現状変更を抑止して、我が国にとって望ましい安全保障環境」を創出し、国際法に違反する侵略や武力の行使・威嚇を受けている国を支援するための「重要な政策的な手段」となることを前文に新たに付記し、改定の趣旨とその意義を明らかにした。
殺傷兵器も輸出可能に
運用指針については、殺傷能力のない装備品は「国際法違反の侵略を受けている国」であれば全面的に輸出を可能とした。昨年の改定でウクライナに自衛隊の装備品が提供されたが、今回は対象を被侵略国に広げた。自衛隊が持つ武器の「部品」の輸出も解禁された。また輸出の目的は救難や輸送などの5類型に限られていたが、5類型の「本来業務の実施」などに必要であれば、殺傷兵器も輸出できることになった。
さらにこれまでは、外国企業の許可を得て日本国内で製造する「ライセンス生産品」については、米企業がライセンス元の場合で部品に限り輸出を容認していた。新たな指針では、輸出可能なライセンス元を「我が国との間で安全保障面での協力関係がある国」として完成品も認めた。輸出先からの第三国移転も戦闘中の国を除き解禁された。
これを受け、政府は国内で生産するパトリオット地対空ミサイルを米国に輸出することを決定した。ウクライナ支援で減少する米軍保有のパトリオットミサイルを補うもので、わが国による間接的なウクライナ支援ともなる。
ただ国際共同開発品の第三国輸出は、部品は認めるが、完成品については公明党が慎重な立場を崩さず、結論が先送りされた。武器輸出を可能とする5類型の見直しも同様だ。輸出緩和は、日本が英伊と共同開発する次期戦闘機が念頭にある。
今回の改定で、殺傷能力のある武器の輸出が初めて可能になった。武器輸出は紛争を助長する危険な政策との指摘もあるが、それは誤った理解だ。防衛装備移転三原則を定めた安倍政権は、日本が国際の平和と安全の確保に積極的に関わっていくべきとの「積極的平和主義」を打ち出し現在も継承されている。三原則および運用指針の改定はその趣旨に沿うものであり、大きな前進と言える。
日本が価値や理念を共有する友好国に防衛装備品を供給すれば、関係は一層緊密化し、自由主義陣営の安全保障にも貢献できる。装備品の供給力を持てば、侵略国への提供を拒否することで国際紛争の抑制にも寄与する。装備品のコストダウンや防衛産業の育成も期待できるほか、高性能な装備品の国産化に道を開くことにもなる。1967年に当時の佐藤栄作首相が「武器輸出三原則」を表明して以来、多くの制約が課せられてきたが、節度ある防衛装備品の輸出は重要な政策である。
国際開発品の解禁急げ
なお国際共同開発品(完成品)の第三国輸出の扱いが保留となったが、次期戦闘機の共同開発作業に遅れが生じないよう与党は協議を急ぎ、早期に輸出解禁に踏み切るべきである。