2024年度予算案が閣議決定された。一般会計総額は112兆717億円と、前年度当初予算を2・3兆円下回る12年ぶりの減額編成である。
日本経済は物価高による消費の低迷で力強さを欠く一方、社会保障費や防衛費などは今後も歳出の拡大が見込まれる。政府は経済の回復に全力を挙げるとともに、一段の税収増を図るべく成長重視を貫いてほしい。
賃上げ後押しの政策並ぶ
24年度予算案は「物価に負けない賃上げ」を目標に掲げたこともあり、社会全体の賃上げを後押しする政策が並んだ。診療・介護・障害福祉サービスの報酬改定や公立小中学校の教職員の給与改善、保育士の処遇改善などのほか、企業に対しては賃上げ促進税制を拡充する。賃上げへ政策を総動員した点は評価したい。
もっとも4万円の定額減税については、23年度補正で住民税非課税世帯を対象に実施した給付でなぜ対応しなかったのか。消費低迷が続き、マイナス成長に落ち込んだ日本経済の現状に鈍感な対応と言え、速さや効果の面で悔やまれる。
政府はこうした賃上げを後押しする政策と共に、エネルギー対策費でガソリンや電気・ガス代の一部を補助して家計の負担を引き続き和らげる。物価高に鈍さも出てきたが、その克服に全力を挙げてもらいたい。
24年度予算案は、新型コロナウイルス対策で膨らんだ歳出を「平時に戻していく」方針をも打ち出している。
一般会計の規模は確かに前年度当初予算を下回ったが、予備費を4兆円減らした影響が大きく、また「防衛力強化資金」の繰り入れ分がなくなった一時的な要因もある。これらを除けば歳出は拡大しているのが実情である。
社会保障費、防衛費、国債費は過去最大を更新した。特に国債費は日銀の政策修正に伴う長期金利の上昇基調を反映し、利払い費の算出に使う想定金利が23年度の1・1%から1・9%に17年ぶりに引き上げられた。
これらの費用は今後も増大が見込まれるだけに、社会保障制度の改革や既存の産業振興策を点検し、ニーズが少なくなった予算を削るなどの努力は一層重要になってくる。
ただ、過度な歳出削減は禁物である。経済を傷め、成長や税収増にマイナスとなるからである。政府は23~27年度で総額43兆円の防衛予算を増税や歳出改革などで捻出するとしているが、財源を安定的に確保する上では国債発行での対応が望ましいのではないか。
歳出圧力の増加に対しては、歳出改革に努めながらも、基本的には成長重視すなわち経済を成長・拡大させ税収を増やすことで対応する。「経済あっての財政」であり、「物価に負けない賃上げ」を目指すのもそのためである。
メリハリつけた編成を
脱炭素化の取り組みは世界的な課題であるが、成長の源泉でもある。水素導入の加速や蓄電池の開発、生成AI(人工知能)の研究開発など成長や競争力確保に不可欠な分野には重点投資する。メリハリをつけた予算編成が大事な所以である。