このまま少子高齢化が進めば、2050年頃には地方で社会基盤そのものの維持が危うくなる一方、東京一極集中が加速し人口減少に拍車が掛かる。地方に若者が留まるための大きな戦略構想を政府は築き実行していくべきである。
11県で20年比30%超減少
国立社会保障・人口問題研究所は50年までの「地域別将来推計人口」を公表した。20年の国勢調査に基づくもので、それによると、50年の日本の総人口は20年比2146万人減の1億468万人となり、地方の人口減少と高齢化、東京への一極集中がさらに深刻化する。
東京以外の全ての道府県で人口は下回る。特に、秋田、青森、岩手、高知、長崎など11県では20年比30%以上もの減となる。最も減少率が大きいのは秋田で42%、次いで青森が39%、岩手と高知が35%となっている。地方では人口減と共に高齢化がさらに進み、50年には人口減の激しい11県を含む25道県で65歳以上の人口割合が4割を超える。
研究所は、前回5年前の推計と比較すると大都市圏を中心に人口減少のペースが緩やかになっているとしている。しかし今後、地方では高齢者も減少するという。
地方では社会インフラや行政サービスなど社会基盤そのものの維持も難しくなる可能性がある。限界集落が増加し、町村レベルの自治体の存続すら危うくなりかねない。
東京の人口は40年まで増え続け、それ以降は減少に転じるとの推計だが、総人口に占める東京の人口割合は20年の11・1%から50年には13・8%に上がる。このままでは東京への一極集中も歯止めがかかりそうにない。
昨年までの10年間合計の人口移動を見ると、東京は46道府県から61万人の転入超過となっている。東京への一極集中は、少子化の流れを加速させている。22年の合計特殊出生率は全国平均1・26だが、東京は最低の1・04だ。出産適齢期の女性が地方からいなくなり、転入した東京では、都市型の生活や文化、社会環境の中で出産もより負担が大きくなる。
東京など大都市圏と地方の差はますます大きくなり、地方からの人口流出に拍車を掛ける恐れもある。それがさらに人口減を加速させるというスパイラルもあり得ない話ではない。
政府の少子化対策はほぼ全国一律に策定されているが、投入する莫大(ばくだい)な予算に比べてその実効性は不透明だ。理由の一つは、大都市圏と地方との関係や、将来予想されるいびつな状況を念頭に置いていないからだ。
子育てでは地方の方が環境は整っている。しかし若者たちが地方に残るためには、就学、就職などの面でもっと魅力的で有利になる必要がある。これは地方の問題というより、国の存続・発展に直結する問題である。
有効な具体策を早急に
政府は、若者たちが留まり、あるいはUターン、Iターンできるような地方の活性化のために、首都機能や政府機能の地方移転を含めた大胆な構想を描く必要がある。
その上で、地方と連携し有効な具体策を早急につくり上げていくべきである。