【社説】日本とASEAN 中国念頭に信頼関係強化を

日本と東南アジア諸国連合(ASEAN)が友好協力関係50周年を迎えた。これに合わせた特別首脳会議では、今後のビジョンを示す共同声明を発表した。今までの関係を土台に、さらに信頼関係を強化すべきだ。

半世紀にわたる結び付き

共同声明は「民主主義や法の支配、人権尊重の原則を堅持する世界を目指す」と宣言。①平和と安定②未来の経済・社会共創③人的交流――の3項目について協力の在り方を記した。130の具体策を列挙した実施計画も合わせて公表。これに先立つ討議で、岸田文雄首相は今後5年間で官民合わせて350億㌦(約5兆円)の投資を目指す考えを各首脳に伝えた。

また共同声明は、中国の強引な海洋進出を念頭に、紛争の平和的解決や武力による威嚇放棄を主張。「自由で開かれた、ルールに基づくインド太平洋」を促進すると明記した。岸田首相は「同志国」に防衛装備品を無償供与する「政府安全保障能力強化支援(OSA)」を展開していく方針を示すなど、安全保障分野の連携強化を確認した。

ASEAN各国のうち、南シナ海で中国と領有権を争うフィリピンとは、11月の日比首脳会談でOSAの適用による沿岸監視レーダー供与で合意。自衛隊と比軍の往来に関する「円滑化協定(RAA)」締結に向けた交渉開始でも一致するなど、日本はフィリピンを「準同盟国」と位置付けようとしている。

マレーシアとも今回の特別首脳会議に合わせ、OSAを活用しての救難艇や警戒監視用ドローンの無償供与で合意した。こうした支援を地域の平和と安定につなげる必要がある。

岸田首相は中国に対抗するため、安保分野を中心にASEANとの「新たな協力の姿」を示すことに腐心した。もっとも、中国との向き合い方は加盟国間でさまざまだ。ラオスやカンボジアなどは「親中」的な動きが目立つ。このため、日本は共同声明の文言調整で露骨な対中批判は控えた。

ASEAN内では、特に経済分野における中国の存在感が増している。しかし過剰な依存への危機感があり、経済安保への関心も高まっているとの見方も出ている。中国が相手国を借金漬けにして影響力を強める「債務のわな」への警戒もあろう。

日本とASEANとの関係は1973年に立ち上げた「合成ゴムフォーラム」が起点だ。半世紀にわたる結び付きを生かし、日本は質の高いインフラ整備などで信頼を向上させることが求められる。

岸田首相はASEANの電気自動車(EV)生産能力増強に向け、日本が協力して戦略を策定、実施する「次世代自動車産業共創イニシアチブ」をスタートさせると説明。10年間で1000万人が関わる人的交流プログラム「次世代共創パートナーシップ」を開始すると語った。

共に発展し平和実現を

日本はASEANを一方的な支援の対象ではなく、対等なパートナーとして位置付ける「共創」の考え方を共同声明で打ち出した。

日本とASEANが共に発展し、地域の平和を実現することが期待される。

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