北朝鮮が平壌周辺から日本海に大陸間弾道ミサイル(ICBM)級とみられる弾道ミサイル1発を発射し、北海道・奥尻島北西約250㌔の排他的経済水域(EEZ)外に落下した。
これで北朝鮮による弾道ミサイル発射は2日連続となった。船舶や航空機などの被害情報は確認されていないが、国連安全保障理事会決議に違反する行為であり、危険で身勝手な挑発は断じて容認できない。
露の協力で衛星打ち上げ
2日目のミサイルは通常より高角度の「ロフテッド軌道」で発射され、約1000㌔飛行。弾頭重量によっては射程が1万5000㌔を超え、米全土が射程に含まれるという。ICBM級の発射は、固体燃料式のICBM「火星18」を撃った7月12日以来となる。
今回のミサイルも固体燃料式とみられる。固体燃料は注入に時間がかかる液体燃料に比べ、短時間での発射が可能で探知されにくく、北朝鮮による「奇襲攻撃」の脅威が高まっている。北朝鮮は11月に軍事偵察衛星を打ち上げるなど核・ミサイル開発の高度化を進めている。
日米韓3カ国は、北朝鮮の弾道ミサイル発射情報を即時共有するシステムの運用を近く開始する見通しだ。北朝鮮のミサイル発射には、これに対抗する意図があるとみていい。日米韓は一層の連携強化で対処することが求められよう。
北朝鮮を巡っては、金正恩朝鮮労働党総書記の「ジュエ」さんとされる娘の動向が関心を集めている。ジュエさんは最近、正恩氏と似た革コートとサングラス姿で軍を視察。「朝鮮の新星女将軍」との新たな称号が使われたとの情報もあり、後継者説が浮上している。
核・ミサイル開発は、正恩氏を中心とする独裁体制を守るためのものにほかならない。「4代世襲体制が続けば結局、被害者は北朝鮮住民」(韓国の金暎浩統一相)であり、自由を奪われた住民の窮乏が続くことは目に見えている。北朝鮮の統治者として住民の苦しみを放置することは無責任極まる。
正恩氏は9月、ロシアを訪問してプーチン大統領と会談し、ウクライナに侵略を支持する考えを表明。「三度目の正直」で軍事偵察衛星の打ち上げに成功した背景には、ロシアの軍事協力でロケットのエンジンに関する技術が向上したことがある。
国連安保理が北朝鮮の衛星打ち上げを受けて開催した緊急の公開会合で、15理事国のうち日米など13カ国が「打ち上げは安保理決議違反だ」として非難したり懸念を表明したりしたが、中国とロシアは北朝鮮を擁護。安保理として一致した行動を取ることはできなかった。
安保理常任理事国の中露両国が、決議に違反する北朝鮮を放任し、安保理を機能不全に陥らせている現状は、安保理の「国際の平和及び安全の維持に関する主要な責任」(国連憲章24条)の遂行を妨げるものだと言わざるを得ない。
反撃能力保有の加速を
日本は北朝鮮の核・ミサイルの脅威に対し、反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有や核シェルターの整備を加速させなければならない。