【社説】12月日銀短観 物価高収束で賃上げに本腰を

日銀が発表した12月の全国企業短期経済観測調査(短観)は、景況感を示す業況判断指数(DI)が大企業と中小企業の製造業、非製造業でそろって改善した。先行きは悪化を見込むものの、物価高に沈静化の動きが現れ、最近の円高傾向で懸念も和らごう。消費の回復へ中小企業でも持続的な賃上げに取り組んでほしい。

価格転嫁進み景況感改善

業況判断DIは大企業製造業でプラス12と3四半期連続で改善、大企業非製造業はプラス30と1991年11月以来32年1カ月ぶりの高水準で7期連続の改善となった。中小企業でも製造業がプラス1と2019年3月以来、4年9カ月ぶりにプラス圏に浮上し、非製造業はプラス14と7期連続の改善である。

大企業と中小企業の製造業、非製造業でそろっての景況感の改善は、半導体不足の緩和による自動車生産の回復が幅広い業種に波及し、またコロナ禍で抑制された経済活動が正常化したことに加え、原材料価格の高騰を補う価格転嫁が進んだからである。円安によるインバウンド(訪日客)消費も好調だった。

もっとも、先行きについてはそろって2ポイントから7ポイントの悪化を見込む。製造業は海外経済の減速懸念、非製造業では人手不足や物価高による消費減退の懸念からだ。

確かに消費減退は現に進行している。実質賃金が10月も前年同月比2・3%減とマイナスが19カ月連続のため、家計調査による10月の消費支出は、実質で同2・5%減とマイナスは8カ月連続。消費の弱さなどから7~9月期の国内総生産(GDP)は4四半期ぶりのマイナス成長に転じてしまった。

ただ、ここにきて物価高に大きな影響をもたらしてきた為替相場に変化が見られる。日米金融当局の政策変更とも言える調整により、11月半ばに1㌦=151円台まで下落した円相場が徐々に円高方向に進み、12月14日には一時140円台後半まで上昇する状況になってきた。

今回の短観は、調査期間が11月9日から12月12日だった。この間の円相場は12月8日に一時142円台に付けたのを除いて151~144円台で推移し、企業としては円安が修正されていくのではと感じ始めた段階であろう。

日銀総裁の「年末から来年にかけて一段とチャレンジングになる」との発言に加え、米連邦準備制度理事会(FRB)の3会合連続の政策金利据え置き決定は、日米の従来の政策からの転換を意味するものと言える。日米金利差の拡大を背景とした円安進行の局面は終わり、今後、当面は円高に向かおう。物価高の一大要因が消えていくわけである。

中小含め相応の伸びを

食品の値上げは12月に677品目と減少傾向で、今後も値上げラッシュは収束の様相を呈するという。逆に値下げに動くスーパーも出てきている。

物価が落ち着き、消費の回復が見込めるようになれば、賃上げもしやすくなる。23年度の大企業全産業の設備投資計画は前年度比13・5%増を見込む。賃上げでも中小を含め、相応の伸びに取り組んでほしい。

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