日本大学アメリカンフットボール部員の違法薬物事件を巡り、日大の林真理子理事長が記者会見で学生や保護者らに改めて謝罪した。学生が安心して大学生活を送れるよう、林氏は不退転の決意で改革に臨まなければならない。
深刻なガバナンス不全
林氏は会見冒頭で「大変なご心配とご迷惑をかけ、改めて深くおわびする」と述べた。また、改革に向け「断固たる決意で実行する」と強調した。しかし、改革への道は険しいことを覚悟する必要がある。
事件ではこれまでに部員3人が逮捕されるなど計4人が摘発された。学内で薬物が蔓延(まんえん)していたことも大きな問題だが、アメフト部の寮で発見された大麻とみられる植物片を沢田康広副学長が一時保管するなど、大学側の法令軽視も目に余る。
大学法人としての対応に関する第三者委員会は10月末に公表された調査報告書で、法人内部での情報伝達の遅れに加え、内部統制や危機管理の知見の欠如を指摘。ガバナンス(組織統治)が「機能不全に陥っていた」と厳しい見方を示した。
特に沢田氏が植物片を発見してから警察に連絡するまで「空白の12日間」があったことについて、犯罪になる可能性にも触れて「立件可能性が低ければ大きな問題ではないという誤った判断に基づいていた」と批判。林氏に関しても、沢田氏から報告を受けた後も調査指示を出さず、理事会などに報告しなかったことを「著しく不適切」と評価した。沢田氏の対応は言語道断だが、林氏の指導力が不足していたことも否めない。
アメフト部を巡っては、いったん廃部の方針が示されたものの、林氏は「理事会でもう少し審議する」と話した。廃部反対の声に配慮したのだろうが、混乱している印象は拭えない。大学の意思決定の在り方にも課題を残したと言える。
林氏は8月の会見で「スポーツは私にとってちょっと遠慮すべき分野だった」と語った。だが日大出身の林氏は、アメフト部の「危険タックル問題」や元理事長の脱税事件で揺れた日大の改革を託され、昨年7月に理事長に就任した経緯がある。自身の役割を自覚すべきだ。
日大が文部科学省に提出した改善計画では、ガバナンス体制の見直しのほか、競技スポーツ部の管理体制の再構築などを明記。日大は酒井健夫学長が今年度末、沢田氏が今月末で辞任するほか、林氏の減俸50%(6カ月)を発表している。
一方、文科省は改善計画に対し、弁護士ら有識者を交えた点検チームを年内に設ける。私立大の改善計画への対応としては異例であり、それだけ日大のガバナンス不全が深刻であることの表れだと言える。
旧弊打破する指導力を
調査報告書は、日大の事件への対応の「最大の問題」として「立証されていない事実の矮小(わいしょう)化や、情報の都合のいい解釈、自己を正当化した姿勢」に言及している。
自浄能力の欠けた日大の改革は決して簡単ではないが、さまざまな旧弊を打破する不退転の決意と指導力が、林氏に求められている。