【社説】梅毒の流行 性規範の回復が不可欠だ

性感染症の一つ、梅毒の患者数が3年連続で最多を更新した。不特定多数との性行為の広がりが背景にあるのは明らかだ。個人の自由や権利に偏った価値観が性規範の乱れにつながっているとみて間違いない。

3年連続で最多更新

国や地方自治体、そしてマスコミも含めてプライバシーの問題だからと、国民に性規範を問うことは避ける傾向がある。だが、赤ちゃんにまで深刻な影響を及ぼす梅毒の流行は今や公共政策の重要課題である。これ以上の患者増加を防ぐため、性規範向上に踏み込んだ対策を講じることに躊躇(ちゅうちょ)すべきでない。

「梅毒トレポネーマ」を病原体とする梅毒は、保菌者と性的接触がなければ心配する必要がほとんどないため、性感染症の代表と言われている。この細菌に感染すると、性器や口にしこりができた後、全身の発疹などの症状が出る。一方、3週間から6週間ほどの潜伏期間がある上、無症状のケースもあり、感染に気付かないまま感染を広げる可能性もある。

感染が早く発見されれば薬で容易に治療できるので、心配であれば早期の受診が肝要だ。しかし放置すると、内臓に重篤な障害を引き起こす危険がある。また妊婦が感染すると、母体から胎児も感染し、赤ちゃんに知的障害や視覚・聴覚障害などが出る「先天梅毒」を引き起こす恐れがある。さらに死産や早産につながることもあるので、決して軽く考えてはいけない。

国立感染症研究所のまとめによると、今年の梅毒患者は11月19日時点で1万3251人(速報値)に達した。昨年は1万3228人(前年比1・6倍)で、現在の調査方法となった1999年以降初めて1万人を超えていた。今年は既に昨年を超え、3年連続で最多更新。しかも、過去最低だった2003年(509人)の26倍である。

多くの感染症報告が減少する中、梅毒の増加ぶりはすさまじい。先天梅毒も10月4日時点で32人が報告され、これまでの最多23人(19年)を大幅に上回っている。まさに緊急事態である。

背景としては、性風俗店やSNS(インターネット交流サイト)の利用などによって、不特定多数との性行為が社会に蔓延(まんえん)していることが考えられる。性風俗店で働く女性が梅毒に感染するリスクが高いことは世界的に報告されている事実だ。そこから男性が感染し、さらに一般の女性へと感染が拡大していると考えられている。大人の思慮を欠いた行為の最大の犠牲者は無垢(むく)の赤ちゃんと言えるだろう。

厚生労働省や地方自治体はホームページで「予防にはコンドームの正しい利用が有効」とするとともに、症状があれば医療機関を受診するよう呼び掛けている。だが、梅毒の流行がこれだけで縮小するとは思えない。問題の根は不特定多数との性行為にあるのだから、そこに焦点を当てた対策が不可欠である。

マスコミも反省せよ

学校をはじめ、あらゆる場で梅毒の恐ろしさと性規範の重要性を国民に周知すべきだ。近年、マスコミが「性の多様化」を喧伝(けんでん)し過ぎることも性規範の乱れに拍車が掛かる一因だろう。マスコミにも反省を促したい。

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