【社説】拉致問題 全被害者の帰国実現を急げ

北朝鮮による拉致被害者全員の即時一括帰国を求める「国民大集会」が東京都内で開かれ、被害者家族や支援者、国会議員ら約800人が出席した。

無辜(むこ)の日本人を拉致した北朝鮮の国家犯罪は断じて容認できない。家族の高齢化が進む中、日本は一日も早く全被害者の帰国を実現しなければならない。

北に引き裂かれた家族

13歳だった横田めぐみさんが拉致されてから今月15日で46年が経過した。あまりにも長い歳月である。政府が被害者と認定しながら帰国が実現していない12人の親世代で存命なのは、めぐみさんの母で87歳の早紀江さんと有本恵子さんの父で95歳の明弘さんのみだ。

めぐみさんの弟で、拉致被害者家族会代表の拓也さんは「親世代は高齢で、存命のうちに全拉致被害者が帰国できなければ解決とは言えない」と訴えた。早紀江さんは「親だから命懸けで闘いたいと思っている。身代わりになれるならなってもいい」と悲痛な思いを語った。

一方、高齢になった被害者もいる。被害者の曽我ひとみさんは、一緒に拉致され安否が分からない母ミヨシさんについて「12月で92歳。北朝鮮でしっかり食べているのか、心配が尽きない」と案じた。

北朝鮮が日本人を拉致したのは、工作員に日本語の教育を行い、拉致した日本人の身分を利用して韓国に潜入させるためだった。自国の謀略活動のため、日本人の家族を引き裂いた北朝鮮の拉致は、実に卑劣で許し難い犯罪である。

そればかりか北朝鮮は、被害者家族の気持ちを踏みにじるようなことを繰り返してきた。北朝鮮は2002年9月の日朝首脳会談で日本人拉致を認めたが、未帰国の被害者12人について「8人死亡、4人未入国」と主張。しかし04年にめぐみさんのものとして提出した遺骨は、日本側のDNA鑑定で別人のものと判明した。

14年5月には拉致問題解決に向け、日朝両政府がストックホルム合意を交わした。北朝鮮が拉致被害者らの再調査を約束し、特別調査委員会を設置する一方、日本が調査開始時に独自制裁を一部解除することを決めたものだ。だが北朝鮮が核実験や弾道ミサイル発射を繰り返したため、日本が新たな独自制裁を決定すると、北朝鮮は反発して再調査の全面中止と調査委の解体を宣言。「拉致問題は解決済み」と主張するなど不誠実極まる対応に終始している。

国民大集会に出席した岸田文雄首相は、金正恩朝鮮労働党総書記との首脳会談について「早期の実現に向け、働き掛けを一層強める」と述べた。北朝鮮による拉致は重大な主権侵害であり、国民の安全を守れなかった政府の責任は重い。一刻も早い解決に向けて尽力すべきだ。

スパイ防止法の制定を

政府が拉致被害者として認定した17人のほかにも、拉致の可能性を排除できない行方不明者が900人近く存在する。

日本人が拉致されたのは、北朝鮮工作員が日本国内で暗躍することを抑止できなかったためだ。悲劇を繰り返さないためには、スパイ防止法の制定が求められる。

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