【社説】ガザ戦闘休止 憎悪の連鎖を断つ契機に

イスラエルとイスラム組織ハマスが戦闘休止と人質交換を開始した。ひとまず合意を歓迎したい。だが、解放が実現しても200人近い人質が残り、その後戦闘が再開されることは間違いない。

道筋見えぬ「2国家共存」

ハマス襲撃の10月7日をイスラエルの人々は「暗黒の安息日」と呼ぶ。土曜日でユダヤ教の休日に当たっていたためだ。ナチス・ドイツによるユダヤ人大虐殺「ホロコースト」に例えられ、2001年の米同時多発テロになぞらえて「イスラエルの9・11」とも呼ばれている。それほど、イスラエルとユダヤ人にとって衝撃的な出来事だった。

軍事力ではイスラエルが圧倒しており、ハマスの攻撃能力の破壊が進めば、大規模な戦闘はひと段落するだろう。しかし、イスラエルによるテロ殲滅(せんめつ)のための長い戦いが止まることはない。一方、パレスチナ自治区ガザのハマスにとっても40年近くに及ぶ「イスラエル憎悪」が変わることはない。イスラエルの破壊を狙うイランからの支援も止まることはないだろう。

今年は「パレスチナ暫定自治宣言(オスロ合意)」から30年。その翌年、自治政府が発足した。合意にパレスチナ独立は明記されていないものの、国際社会の言う「2国家共存」はイスラエルとパレスチナが共に独立国家として平和的に共存することを目指すものだ。

実現には、外国からの支援頼みのパレスチナ自治政府を自立できるよう変えていく必要がある。それには、1970年代からイスラエルが進めてきた入植地の建設が障害となる。入植者数は40万人を超え、自治政府発足時から4倍に増加した。

一方のパレスチナ人は、ガザ地区に200万人超、ヨルダン川西岸に300万人超、双方で五百数十万人に達する。イスラエルの保守強硬派の中には「1国家」によるパレスチナ問題の解決を主張する声が根強い。今回の衝突を受け、イスラエル内部でガザ地区の住民をエジプト領のシナイ半島に強制移住させる案も出ているという。保守強硬派は衝突を「パレスチナ人追放の好機」とみることだろう。

イスラエルの元国会副議長ヒリク・バール氏(中道左派・労働党)は2017年、国連安保理での入植活動停止要求決議を受けて本紙に「1国家では問題は解決しない。イスラエルはユダヤ国家でも、民主国家でもなくなる」と指摘。入植活動の拡大に懸念を表明した。

イスラエル政府は07年のパレスチナ和平プロセスに関する基本指針で「(パレスチナ独立は)中東にもう一つのテロ国家ができることだ」と指摘した。ハマスがガザ地区を武力で実効支配した年のことだ。

超宗教的な枠組みを

ヨルダン川西岸でも、イスラエル軍とパレスチナ人の衝突は激化し、パレスチナ人の死者は200人に迫る。

ハマスのテロに屈するべきではない。一方、不毛な戦いを終わらせる2国家共存への道筋を模索し、憎悪の連鎖を断つ契機とすべきだ。それには、イスラム、ユダヤ間の歴史的因縁を乗り越える超宗教的な枠組みも必要になる。

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