【社説】家庭連合財産 立法パフォーマンスも問題だ

文部科学省が解散命令請求を裁判所に提起している世界平和統一家庭連合(家庭連合)の財産を巡り、「被害者救済」を名目に与野党がそれぞれ特例法案や特別措置法案を提出して今国会中の成立を目指している。

教団は代表者が記者会見で供託金の申し出などを表明したが、与野党は取り合わず、その立法行為も過剰となれば憲法に抵触する恐れがある。

信教の自由侵害の恐れ

自民、公明、国民民主の与野党3党が衆院に提出した特例法案は、①不動産処分の事前通知②財産目録の3カ月ごとの提出③被害者の法テラス活用の支援拡充④3年間の時限立法で延長可能―などから成り、教団の財産に対する監視を強化して海外流出の防止を目的としている。

また立憲民主、日本維新の会の野党2党が衆院に共同提出した特措法案は、①裁判所が教団財産の保全を命令②2年間の時限立法③必要であれば宗教法人法を改正―などの内容だ。立民が「財産の海外移転」などを懸念して策定し提出していた財産保全法案をベースに、維新が提出していた宗教法人法改正案の含みを残す規定を付則に盛り込むことで一本化した。

だが、7日に記者会見した家庭連合会長の田中富広氏は、海外への送金はストップしていると報告し、さらに「取引銀行からもインボイスなどの確実な書類があるものを除き、海外送金はできないと指導を受けている」ことを明らかにした。

立法化の前に既に銀行などの指導で事足りている状況である。加えて、田中氏は昨年9月から「教会改革の一環」として海外送金を減額して、現在はストップしていると述べていることから、資金移転しない教団の方針は動かないだろう。

また、田中氏は「教団への恨み」を理由とした安倍晋三元首相銃撃事件の後、多くの苦情や相談、返金請求があったことを明らかにして「率直なおわび」を表明し、裁判所で解散命令請求を巡る結論が出るまで最高100億円の供託金を国に預けることを申し出た。

法的根拠がないことを理由に政府や各党は言下に拒否したが、法人として自らの財産を被害が確定された時のために拠出する意思を示した点は、自らの財産権に基づく重要な提案だったのではないか。

これに対して立民・維新の財産保全のための特措法案は、憲法の保障する信教の自由や財産権を侵害する恐れがあるとの指摘もある。家庭連合は解散命令請求されたが、法人として存在している。解散請求について教団は法人に対する「死刑求刑」に等しいと遺憾の意を表明したが、死刑求刑された被告に食事を与えなければ虐待であり人権問題である。財産保全法案に同様な問題はないのか。

保全には慎重期すべきだ

“勧善懲悪”の政党パフォーマンスが行き過ぎれば支持率も上がらない。宗教団体のほとんどが献金やお布施で運営しており、献金額は家計の収支バランスと次元を異にする面もある。これを「潜在的被害」として財産保全するのは、乱暴な議論であり、信教の自由を侵害する恐れがある。慎重を期すべきだ。

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