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【社説】GDPマイナス 物価高対策で内需の回復図れ

2023年7~9月期の国内総生産(GDP)速報値が、物価変動の影響を除く実質で前期比0・5%減、年率換算では2・1%減と、3四半期ぶりのマイナス成長になった。一時的な要因もあるものの、物価高が個人消費と設備投資といった内需回復の大きな足かせになっている。物価高の克服に政府・日銀は全力を挙げるべきである。

個人消費も振るわず

7~9月期の成長率は民間シンクタンク10社の事前予測(平均年率0・6%減)を大きく下回った。GDPの5割超を占める個人消費は、コロナ禍からの回復で小幅ながらプラス成長が見込まれていたが、結果は前期比0・04%減と振るわず、2期連続のマイナスである。

物価の変動を反映させた実質賃金が18カ月連続マイナスで、消費支出も7カ月連続のマイナス。物価高に賃金上昇が追い付かず、消費者の節約志向は強まるばかり。消費を下押しする構図から依然抜け出せずにいる。サービス消費などが回復を見せてはいるものの、値上げにより旅行や外食の需要が抑制され、その動きは非常に緩慢なものにならざるを得ないのである。

内需のもう一つの柱である設備投資も、0・6%減と2期連続のマイナスで振るわない。脱炭素やデジタル化などへの企業の投資意欲は根強いが、建設資材の価格高騰などが響き、工場などの建設投資も減少。物価高の影響で思うように投資ができていない状況がうかがえる。

コロナ禍からの回復過程にありながら、物価高が予想以上にそれらの勢いを削いで内需が力強さを持てないでいるのである。前期に高成長を主導した外需も、輸出は0・5%増と2期連続のプラスだったが、輸入が前期大幅に減少した反動もあって1・0%増と輸出以上に伸びてマイナスに転じた。

7~9月期が予想以上の落ち込みになったのは、景気の牽引(けんいん)役が不在となってしまったからである。自動車工場の稼働停止といった特殊要因の影響もあるが、GDP成長率に対する寄与度(内需マイナス0・4%、外需マイナス0・1%)が示すように、物価高が成長の大きな足かせになっているのである。

それでも現時点で、10~12月期はプラス成長に復帰すると見込まれている。前述の特殊要因(自動車の供給制約)がなくなり、また、5期ぶりにマイナスに転じたインバウンド(訪日客)消費額も中国団体客の増加などでプラスに戻ると予想されるからである。

とはいえ、円安や資源高を背景に一定の物価上昇が続く状況に大きな変化がない以上、現状のままであれば所得や消費を巡る環境の改善も見込みにくい。来年春闘での今年並みの賃上げはもちろん、経済対策での支援が求められる所以(ゆえん)である。

定額減税は取りやめよ

だが、政府の総合経済対策、特に定額減税は制度設計が複雑で実施も来年6月と遅く、消費への効果も限定的である。定額減税は取りやめ、対象を広げた給付に一本化すべきである。日銀も政府と合わせ、一段の物価高を招くことがないよう、今以上の円安阻止へ断固とした措置を検討すべきである。

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