【社説】米中首脳会談 関係改善に過度の期待は禁物

バイデン米大統領と中国の習近平国家主席が米西部カリフォルニア州で首脳会談を行った。米中首脳会談は、昨年11月にインドネシアのバリ島で開催されて以来1年ぶり。両首脳は国防相を含む軍部間の対話再開や首脳間の電話による対話チャンネルの開設で合意した。

軍事対話再開で合意

昨年8月、ペロシ米下院議長(当時)の台湾訪問に強く反発した中国は、米中の軍事レベルの対話を中断させた。さらに今年2月、中国の偵察気球を米軍が撃墜したことで米中関係はさらに冷え込み、対話は途絶えたままであった。

台湾周辺や南シナ海における中国の行動で緊張が高まる中、偶発的な衝突を防ぐには軍事的なコミュニケーションの確保が重要との考えから、米側は機会あるごとに軍事面の対話や交流再開を促してきたが、中国は拒否し続けてきた。習氏が再開に応じたことは、米中の意思疎通改善や東アジアの安定を図る上で意義ある成果と言える。バイデン氏も今回の会談を「建設的で生産的だった」と評価したが、今後合意内容の実効性確保のための努力が両国に求められる。

また、ウクライナ情勢やイスラエルとテロ組織ハマスの衝突についても話し合われた。台湾問題は平行線に終わったが、気候変動問題での協力加速や人工知能(AI)に関する対話開始、米中直行便の増加、さらに米国内で乱用が深刻化する合成麻薬「フェンタニル」の製造輸出について、中国が取り締まり対策班を設置することでも合意した。米側が意思疎通改善や軍事対話再開を目指したのは、中国に強い態度に出にくい事情も影響している。米国はいまウクライナ支援やパレスチナ情勢への対応に手一杯で中国と事を構える余裕がない。そのため意思疎通を良くし、中国の力による現状変更の動きを抑止するとともに、偶発的な衝突を防ぎ東アジアの安定を図る必要があった。

また、バイデン政権の対中外交は弱腰だとの批判が野党・共和党から出ている。来年11月に大統領選が迫る中、早期に首脳会談を実現させ、中国の行動に歯止めをかけ対中外交で実績を挙げることが、再選を狙うバイデン氏自身にも必要であった。

一方、習氏の狙いは何か。米国との長期的な対立は不可避であり、米国が先端技術の対中輸出・投資規制緩和に応じる可能性は低いとみている。だが直面している景気低迷などを乗り切るため米国との距離を少し縮め、経済面で一定の譲歩を引き出す機会を掴(つか)みたいとの思惑がある。米中関係改善の演出は、来年1月の台湾総統選で最大野党・国民党の候補に有利に働くとの計算も働いている。米国の招請に応え会談に臨んだことで、大国としての存在感も示せた。

引き続き対中警戒を

首脳会談を受け両国の対話が再開すれば、東アジアの緊張は一定程度緩和に向かおう。だが、意思疎通は和解とは違う。中国が覇権主義的な行動を慎まぬ限り、両国関係の大幅な改善は期待できない。今後中国が台湾や南シナ海、中東問題などで協力的な姿勢を見せるのか、引き続き警戒心をもってその動きを注視していかねばならない

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