【社説】台湾総統選 政府は東アジアの安保に目を

来年1月に行われる台湾総統選まで2カ月を切った。2024年はこれに続き、3月にロシア大統領選、4月に韓国総選挙、秋に米大統領選と、日本の安全保障政策上、注視すべき関係国での重要な選挙が目白押しだ。中でも、皮切りとなる台湾総統選は今後の東アジア情勢を左右するもので、台湾内での事前の情報戦が今日熾烈(しれつ)を極める。岸田政権は内政に目を奪われがちだが、東アジアの安保にも注意を促したい。

中国が注視する野党共闘

民主進歩党(民進党)の蔡英文政権は、2期8年を通じて台湾独立までは掲げず中国との両岸関係は現状維持としながらも、基本的人権などの普遍的価値観、日本が主導する「自由で開かれたインド太平洋」などで、中国共産党政権との差別化を明確にしてきた。また、「台湾アイデンティティー」に寄り添うことで支持を得てきた。

台湾総統選の立候補届け出は今月24日に締め切られる。4年ごと、18歳以上の全有権者によって直接選ばれる台湾総統の権限は強く、副総統で民進党主席(党首)の頼清徳氏が蔡路線を引き継いで当選すれば、民進党政権が初めて連続3期目を迎える。各種世論調査によると、前台北市長の民衆党・柯文哲氏、新北市長の国民党・侯友宜氏、鴻海精密工業創業者の無所属・郭台銘氏を抑え、頼氏が支持率でトップを維持する。

ところが世論調査は、共闘による野党の勝機も明示する。柯氏と侯氏を合わせれば51・4%対38・8%、柯氏と郭氏では51・0%対38・0%で、柯氏はいずれの候補と組んでも頼氏に勝利するという(10月16日付匯流民調)。単純な足し算で計算できないものの、野党共闘の可否が正反対の結果をもたらすが故、この成り行きに目が離せない。

「武力行使を放棄せず」台湾統一を果たす。これを核心的目標に掲げる中国の習近平国家主席は、野党候補の勝利を願う。そのため、米中覇権争いにおいて台湾は米国に利用されているなどとする「疑米論」を中国は台湾無党派層に流布し、情報工作を仕掛けてきた。どんな形であっても野党候補が勝てば、その結果を台湾人が中国と関係を密にしたい民意だと大々的に取り上げていくだろう。

ここにきて東アジア情勢は一層、不安定化の様相を示す。その最たる原因は、欧州のロシア対ウクライナに加え、中東でのイスラム組織ハマス対イスラエルの紛争だ。

避けたい3正面作戦

既にこの2正面に対応せざるを得ないバイデン米政権は、台湾有事を筆頭とする東アジアを加えた3正面化は是が非でも避けなければならない。米サンフランシスコで開催されるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に合わせ、15日に予定されている米中首脳会談が注目される所以(ゆえん)だ。

台湾では総統選を控えて与野党の熾烈な攻防戦が行われている中、日本では岸田政権が内政にとらわれがちで安保上のリスクが増す。物価高対策としての減税案も評価を得られず、内閣支持率は低迷する一方だ。政府は安保政策に真剣に向き合わなければならない。

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