【社説】タクシー不足 安全最優先で解消策論じよ

運転手減少や訪日客急増で観光地や過疎地のタクシー不足が課題となる中、政府の規制改革推進会議のワーキンググループ(WG)で一般ドライバーが有償で乗客を送迎する「ライドシェア」導入についての議論が始まった。安全を最優先に考えて議論を進めるべきだ。

課題多いライドシェア

全国ハイヤー・タクシー連合会によると、全国のタクシー運転手は8月末時点で約23万人。コロナ禍で離職が相次ぎ、2019年3月末から約2割減少した。一方、訪日客の回復で「タクシーがつかまらない」との声が各地に広がっている。

海外で普及しているライドシェアは、日本では「白タク」行為として道路運送法で原則禁止されているが、菅義偉前首相らが導入に前向きな姿勢を表明。岸田文雄首相も今国会の所信表明演説で、議論する考えを示している。

ライドシェアの仕組みは、利用者がスマートフォンのアプリなどで現在地や行き先を送信すると、あらかじめ登録している一般ドライバーが自家用車で迎えに来るというもの。車をつかまえやすく、タクシーよりも割安というメリットがある。

タクシー不足への対策が急がれることは確かだ。ただライドシェアには、安全性の確保や事故時の補償などの課題も多い。海外ではライドシェアに関連する性犯罪が多発しているほか、ドライバーが飲酒運転で逮捕されたケースもある。

導入を巡る議論では、こうした課題にいかに対処するかが問われる。河野太郎規制改革担当相は「守るべきは規制ではなく国民の移動の自由だ」と述べ、議論を加速させる方針を示したが、韓国や香港のようにライドシェアを禁止している国や地域もある。性急な導入は避ける必要がある。

一方、導入に慎重な考えを示すタクシー業界は、タクシー運転手に必要な二種免許取得の緩和を求めている。緩和されればタクシー不足の解消につながるとされるが、業界にはこれまで以上に安全確保の努力が欠かせなくなろう。

政府は先月の観光立国推進閣僚会議で、オーバーツーリズム(観光公害)防止に向けた対策パッケージを取りまとめた。この中でタクシー不足への対策として、女性やパートタイムの運転手を増やすための勤務形態の柔軟化や、二種免許取得の支援、市町村やNPO法人が自家用車で地域住民を送迎する「自家用有償旅客運送」の積極的な活用などを明記した。

今年8月には、タクシー運転手の氏名や顔写真を表示する「運転者証」の車内掲示義務が廃止された。プライバシーを保護し、女性の運転手を増やすための取り組みだ。このほか賃金の引き上げなど、タクシー不足解消に向けた業界の一層の努力も求められる。

自家用有償運送の拡大も

自家用有償旅客運送を巡っては、タクシー業者が運行や車両整備の管理責任を担っている。この制度を拡大することも、タクシー不足を補う上で考慮する必要がある。ライドシェアのほかにも論じるべき方策は多い。

spot_img