中国・北京で多国間の安全保障会議「香山フォーラム」が開催され、中国軍の最高指導機関である中央軍事委員会の制服組トップ、張又侠副主席が基調講演を行った。張氏は「誰であろうと台湾を中国から独立させようとすれば、中国軍は容赦しない」と述べ、台湾問題に関与を強める米国を牽制(けんせい)した。中国では外相と国防相が相次いで解任されており、日米など民主陣営は中国の“異変”への警戒を怠ってはならない。
今月に米中首脳会談か
中国は2006年、毎年シンガポールで開かれるアジア安全保障会議(通称シャングリラ会合)に対抗して香山フォーラムを創設。対面での開催は4年ぶりで、米国を含む100以上の国や国際機関の防衛当局者らが参加した。
基調講演はこれまで慣例で格下の国防相が担当していたが、李尚福前国防相の解任後は空席のため、張氏が行う異例の対応となった。李氏解任の理由が明らかにされていない現状は、さまざまな臆測を呼んでいる。7月には秦剛氏が外相職を解かれており、外交・国防担当閣僚が不在のままだ。
これについて中国がきちんと説明しないのは無責任極まる。李克強前首相の急死を巡ってインターネットで暗殺説が流布するのも、こうした中国の不透明さが一因だと言えよう。
張氏は「(一方の利益が他方の損失となる)ゼロサムゲームで世界を捉え、小グループの政治を行い、単独主義に陥っている国もある」と米国を念頭に非難するなど強気の姿勢を示す一方で「米国との軍事的関係を発展させる」とも述べた。米中は今月のアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に合わせた首脳会談の実現に協力することで一致するなど、対話の兆しが出ている。
背景には、緊迫する中東情勢がある。ウクライナ危機との二正面に対応する形のバイデン米政権は、イスラエルと敵対するイランと良好な関係を築く中国に、紛争拡大を防ぐため影響力を行使するよう求めている。深刻な不動産不況に陥っている中国としても、中東の不安定化は避けたいところだろう。
ただ、中国に気を許すことはできない。米国が中東情勢への対応に追われる中、南シナ海では先月、中国軍機が米軍爆撃機に異常接近したり、南沙(英語名・スプラトリー)諸島近くの海域で中国船がフィリピンの輸送船と衝突したりするなどの挑発行動に出ている。
フォーラムでは、ロシアのショイグ国防相が「西側が押し付ける対立的政策に巻き込まれたくない友人の輪は拡大している」と主張し、北大西洋条約機構(NATO)など米欧主導の安全保障枠組みを批判。日米韓が北朝鮮のミサイル情報の共有を進めていることについて「ロシアと中国の封じ込めを狙うものだ」と主張するなど中露連携を強調する形となった。
米大統領は明確に批判を
米中首脳会談は結構なことだが、中露両国の力による一方的な現状変更は許されない。会談が実現した場合、バイデン大統領は友好ムードで終わらせず、中国を明確に批判すべきだ。