【社説】クマ被害多発 野外にごみを放置しない

東北地方各地でクマによる人身被害が多発している。環境省によると今年度の被害件数は9月末の時点で105件で、過去最悪のペースで増えている。餌となるドングリの不足のため、クマが冬眠に入る12月ごろまで人家周辺に出没する恐れがあるという。

これを踏まえ、同省では被害が目立つ北海道と青森、岩手、秋田各県を中心にクマの調査や捕獲にかかる費用などを自治体に緊急支援する方針を示した。

東北4県でけが人が最多

東北地方各県の報告によると、10月24日までにクマに襲われけがをした人は、秋田県が最も多く57人。次いで岩手県39人、福島県13人、青森県11人、山形県5人、宮城県2人。秋田、岩手、福島、青森の四つの県では、これまでで最も多い。秋田県ではクマの出没の確認数も、10月16日までに2200件と過去最多になっている。

保全生態学を専門にする高槻成紀氏によると、クマの食性は春は草木の新芽や花などを食べ、夏には草木の実、その後はアリやハチの巣などを食べるが、餌が乏しくてスリムになる。秋にはドングリなど木の実をたくさん食べて脂肪を蓄え、冬眠に備える。

ブナやナラが実を付けることは大きな負担で、豊作の後は休むのである。その結果、豊作の年には有り余るほどドングリがあるのに、凶作の時には足りなくなる。

東北森林管理局がブナの実の状況について9月から10月にかけて調査したところ、福島県を除く五つの県で、四つの段階のうち最も実りの少ない「大凶作」となっていた。135カ所ある観測点のうち124カ所で「全く実が付いていない」状況だったという。

秋田市新屋地区で住民5人がクマに襲われた被害の場合、そこは住宅地で、周辺にはクマが棲(す)むような山はなかった。関係者の推測によれば、現場から160㍍離れた所に雄物川が流れており、クマは山から川沿いに下って来た。

 被害件数の最も多い秋田県内で、同県が被害に遭った場所を分析したところ、全体の8割に当たる49人が、人家に近い「人の生活圏」でクマに襲われていたという。

もう一つ、特徴的なことは、1頭ではなく親子とみられる「多頭」のクマの目撃の割合が以前に比べて増えていることだ。このことは親子グマも人里近くに生息し、人里の環境に慣れているとも考えられる。

クマを山から里に引き寄せないために、山には食べかすを捨ててはいけないというのがルールだったが、里にやって来たクマには、柿の実などの果実や野外ごみを放置しないなどの対策が必要となる。匂いの強いものに興味を示すからだ。

生息環境よく知るべきだ

環境省は2022年度からクマ対策強化のモデル事業に乗り出し、北海道と岩手、新潟、長野、福井、奈良の6道県で事業が始まった。

クマの侵入予防が柱だが、こうしたモデル事業よりもクマの動きの方が先を行っているようだ。クマとその生息環境をよく知らなければならない。

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