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【社説】中国の核増強 米との拡大抑止協議深めよ

米国防総省は「中国の軍事及び安全保障の進展に関する年次報告」(2023年版)を公表し、核戦力をはじめとする中国の軍事力増強のペースの速さに強い危機感を示した。

予測超えたスピード

まず核弾頭について、昨年の報告書では中国の保有数を400発以上と見積もっていたが、23年版では500発以上と指摘。予測を超えた急速な核戦力の増強ぶりに警鐘を鳴らすとともに、30年までに1000発を超え(これまでの予測は1000発程度)、その後もさらなる増強が続くとの見通しを示した。

また核運搬手段の増強も急ピッチで進めており、約10個の核弾頭が搭載可能とされる大陸間弾道ミサイル(ICBM)「東風5C」や中国沿岸の海域から米本土を射程に収めることができる潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)「JL3」の配備を始めたと分析。軍備強化の手を緩めようとしない中国の姿勢に米国防総省は憂慮を深めている。

米露は新戦略兵器削減条約(新START)で戦略核弾頭の配備上限を1550発と定めている。軍事管理条約の締結を拒絶している中国がこの数に近づく核弾頭保有を急ぎ、強力な運搬手段を持つことは、核抑止の安定を損ない世界を危険な状況に追い込むことになる。このほか報告書は、ICBM発射施設の増設や通常弾頭搭載型ICBMの開発、さらに台湾など東アジアで中国軍による危険な飛行妨害が2年間で180件超に達したことなど威圧的な行動の増加ぶりも指摘している。

中国が国際秩序を脅かすほどの軍備強化に取り組むのは、建国100周年の49年までに「中華民族の偉大な復興」を成し遂げ、米国を凌ぐ新たな覇権国家となろうとする野心の表れにほかならない。また軍事的には米国に匹敵する核戦力を手にすることで、米国の核抑止力を無力化することを狙うものである。

自由主義諸国は、世界を不安定化させるような軍備増強を慎み、軍備管理の枠組みに加わるよう強く中国に求めるべきだ。同時に強靭(きょうじん)な同盟体制を整え、かつ自らの防衛力強化を急がねばならない。特に米国の核抑止力に安全保障を依存してきた国々は、今後の拡大抑止の在り方や役割分担について米国との協議を深め、米国の“核の傘”が“破れ傘”とならぬよう十分な対策を講じる必要がある。

既に韓国では、米国との間で拡大抑止の在り方などについて協議する「核協議グループ(NCG)」が創設され話し合いが進んでいる。日米韓の連携を強化するだけでなく、わが国の安全保障を盤石なものとするため、日本もこの米韓の枠組みに加わるか、日米の間で類似の協議の場を立ち上げるべきである。

非核三原則の見直し急げ

そして核の共有問題をはじめ、日本の核武装についてもタブー視せず、忌憚のない議論を重ねていかねばならない。非核三原則の見直しも喫緊の課題だ。急速に高まる中国の軍事的脅威に晒(さら)されている厳しい現実を直視し、自らの生存を確保するための大胆な安全保障政策を急ぎ構築することの必要性を、今回の報告書は具体的なデータに基づき日本に示唆している。

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