【社説】財産保全の法整備 まずは本当の被害を特定せよ

臨時国会召集に際し、立憲民主党と日本維新の会はそれぞれ、政府による世界平和統一家庭連合(家庭連合、旧統一教会)の解散命令請求を踏まえ、教団の財産を保全するための特別措置法案と宗教法人法改正案を衆院に提出した。被害者救済の費用に充てるため、資産の海外移転などを防ぐためで、今国会での成立を目指すという。

信徒の活動にも支障

与党自民党は当初、「財産権を定めた憲法に抵触する恐れがある」と慎重論が強かったが、世論の動向を見て「何らかの対応」(茂木敏充幹事長)が必要と方向を変え、創価学会を母体とする公明党もこれに同調した。

財産保全は教団の財産権を制限し、信徒の宗教活動にも多大な支障を来す。信教の自由を実質的に侵す措置だ。裁判所で解散が確定したわけでもなく、「被害」実態も不明確な状況で、性急に進めるべきではない。教団への金銭債権を持つ本来の被害者・金額をまず特定すべきだ。

教団の解散命令請求に際し、盛山正仁文部科学相が示した被害規模は計約204億円(約1550人)。しかし、この大部分は過去に判決が出た民事訴訟や和解・示談した事案の金額(人数)であり、教団側が今後、支払わなければならない金額(人数)ではない。また、文科省が聞き取り調査した170人超が訴える献金被害金額や全国霊感商法対策弁護士連絡会(全国弁連)の進める「集団交渉」で集計された被害額も含まれるが、その全てが教団に支払い義務のあるものではない。

教団側は集団交渉の被害額(第4次まで35億円余り)について「多数の虚偽主張が見受けられ、献金の事実についても、当法人の受領の事実自体が認められないもの、すでに時効や除斥期間が経過したものを多数含(む)」と主張している。これは精査が必要だ。

立民と維新の法案は解散命令請求があった場合、「会社法」を準用して財産保全を行うとしている。両党は、会社法が定める解散要件を理解しているのだろうか。同法には、会社役員が「刑罰法令に触れる行為」を行い、「法務大臣から書面による警告を受けたにもかかわらず、なお継続的に又は反覆して当該行為をしたとき」と明記されている。

現在の宗教法人の解散要件は会社の解散要件より緩やかなのだ。この一例からも、政府の信教の自由に対する姿勢が分かる。

家庭連合の解散命令請求は、全てのプロセスが非公開で進められてきた。文科省のどんな質問に教団は何と答えたのか。何を答えなかったのか。宗教法人審議会で教団側回答や政府の解散命令請求方針について、どんな討議がなされたか。文科省は何を証拠とし解散命令を請求したのか。何も分からない。

全てが非公開で進行

今後の裁判所の審議も非公開なので一宗教法人の解散が密室の中で決まる恐れがある。こんな不都合が起こるのは、誰の目にも明らかな「刑法等」に限っていた宗教法人の解散要件「法令違反」の解釈を、首相が安易に「民事上の不法行為」まで拡大したためだ。財産保全を巡り、世論に押され再びゴールポストを動かす愚を犯してはならない。

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