【社説】「一帯一路」10年 中国の赤い野心に対抗せよ

「一帯一路」は、ユーラシア大陸で中央アジアを経由した陸路とマラッカ海峡やインドを経由した海路を整備し、アジアと欧州を結ぶ巨大経済圏を構築しようという構想だ。10年前に提唱した中国の習近平国家主席の肝煎りのプロジェクトでもある。

北京でフォーラム開催

北京では一帯一路10周年を記念した国際協力サミットフォーラムが開催された。フォーラムに参加した首脳級は、ロシアやカザフスタンのほか、東南アジアやアフリカの国々など20カ国余りにとどまった。前回(2019年)開催された時は38カ国に上ったことを考慮すると、一帯一路への熱気も半減したと読み取れる。

主要な原因の一つは、中国経済の失速だ。中国経済は今年、ゼロコロナ政策を転換させ急回復すると期待されたものの、不動産不況などで景気は低迷、デフレ経済のとば口に立っている。大量の外貨で潤っていた国庫も乏しくなり、ない袖は振れないというのが実態だ。

今回のフォーラムで習氏は、今後の一帯一路は「高水準で、人々の生活に恩恵があり、持続可能であることが重要原則になる」と述べた。キーワードは「質の高い発展」と「持続可能」の2語だ。裏を返せば、これまでの投融資は「低品質の持続不可能型」ということでもある。

それでも善意のバラマキであれば困るのは中国だけだが、「債務の罠(わな)」という悪意の貸し付けが露呈し国際的な警戒心が高まった経緯がある。その典型例が、借金の形として中国に99年間の租借権を与えることになったスリランカのハンバントタ港だ。これで中国はインド洋の要衝を確保したことになる。

さらに中国はパキスタンのグワダル港を43年間租借し、ジブチに自由貿易区と鉄道を建設した見返りに海外初となる軍事基地を建設している。中国の野心が先行し、相手国に寄り添わない融資システムは、債務国の経済的な自由と自立の道を奪い、中国依存を深めていく“アリ地獄”のようなものだ。

なお一帯一路は当初、当時のオバマ米政権のアジア太平洋重視の方針を受け、アジアと欧州への橋頭堡(きょうとうほ)を確保することが目的だった。それがこの10年で、北極海や南太平洋、中南米、アフリカにも拡大し、米国の覇権を追い落とす「鶴翼の陣」の様相を示すようになっている。

とりわけ中国は、米国の影響が手薄な地域でもある「グローバルサウス」と呼ばれる途上国や新興国の取り込みに熱心だ。「農村から都市を包囲する」ことで国民党との内戦に勝利した毛沢東をモデルとして動いている習氏は、その国際版を展開しようとしている可能性がある。

「鶴翼の陣」無効化を

こうした国際戦略としての一帯一路に対抗するため、バイデン米政権はEU(欧州連合)やインド、中東諸国と組み「インド・中東・欧州経済回廊(IMEC)」プロジェクトを打ち出している。

これに東南アジア諸国を結ぶ道路網を核に産業の大動脈を構築する「東西経済回廊」を連結させることで、中国の「鶴翼の陣」を無効化する必要がある。

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