【社説】海兵隊改編 離島防衛での日米連携強化を

米海兵隊が中国への危機感による新たな作戦構想の下、沖縄での新部隊創設をはじめとする変革を急ごうとしている。離島防衛での日米の連携強化を図るべきだ。

11月に沖縄駐留の新部隊

米国は沖縄県に駐留する海兵隊の一部を11月に新部隊「海兵沿岸連隊(MLR)」に改編し、中国の台湾侵攻などへの警戒を一段と強める。最初のMLRは2022年3月に米ハワイに置かれたばかり。沖縄は二つ目で、グアムにも設置する。

海兵隊は20年3月、中国との軍事衝突に備え、改革の道筋を示した「戦力デザイン2030」を発表。中東やアフガニスタンでの対テロ戦に最適化された戦力構成から脱却し、離島防衛を念頭に置いた新たな作戦構想「機動展開前進基地作戦」(EABO)を打ち出した。

2000人規模のMLRはEABOを実現するための部隊で、長距離対艦ミサイルや対空ミサイルを装備する。有事の際には島嶼(とうしょ)部に分散展開し、陸上から中国軍艦艇を攻撃して中国軍の活動を阻害。米海軍による制海権確保を支援するのが主な任務となる。

自衛隊は海兵隊の改編を踏まえ、離島防衛での連携を強化する必要がある。「戦力デザイン2030」発表当時の海兵隊トップのバーガー総司令官は、自衛隊が水陸両用車や輸送機オスプレイ、最新鋭ステルス戦闘機F35など相互運用性のある装備を保有していると指摘。「(海兵隊と)完全に補完し合う関係だ」と強調した。

現在、陸上自衛隊と海兵隊の計6400人が参加する共同訓練「レゾリュート・ドラゴン23」が実施されている。3500人規模だった前回から拡大され、九州・沖縄各地で島嶼防衛や負傷者輸送の訓練を行っている。

日米は今年1月の外務・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)で「南西諸島を含む地域での共同訓練増加」に合意した。自衛隊と米軍の共同対処能力を向上させなければならない。

中国を抑止するには、米国による海兵隊改編と共に南西諸島や九州への自衛隊配備の強化も不可欠だ。防衛省は日本最西端の沖縄県・与那国島や宮古、石垣両島、鹿児島県・奄美大島に陸自の駐屯地を相次いで整備した。また、離島の防衛・奪還が任務で「日本版海兵隊」と呼ばれる陸自の水陸機動団(長崎県・相浦駐屯地)も増強。現在の2連隊体制を23年度末に3連隊とし、新たな連隊を同県・竹松駐屯地に置く。水機団の足となるオスプレイ部隊も、25年7月に木更津駐屯地(千葉県)から佐賀市の駐屯地に移す。

米中距離弾の日本配備を

中国は地域紛争時に米軍の介入を阻む「接近阻止・領域拒否(A2AD)」戦略を打ち出し、ミサイル戦力を大幅に増強している。19年8月のロシアとの中距離核戦力(INF)全廃条約失効後、米軍は条約で禁止されていた射程500~5500㌔の地上発射型ミサイルの開発を開始した。

日本は反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有を急ぐとともに、米国に中距離ミサイルの日本配備を求めるべきだ。

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