トップオピニオン社説【社説】ハマスのテロ 東アジア情勢への警戒強めよ

【社説】ハマスのテロ 東アジア情勢への警戒強めよ

パレスチナのガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスが、イスラエルにテロ行為を働いて9日が経過した。イスラエルも即時報復し、14日現在で双方の死者は3500人以上に上る。ハマスは国籍を問わず多くの人質を盾にしており、事態は予断を許さない状況だ。

長引くロシアのウクライナ侵略に加え、中東ではイスラエルが宣戦布告。世界のパワーバランスが変化する中、わが国は緊張感高まる東アジア情勢を一層注視しなければならない。

二正面対応の米政権

数千発のロケット弾に始まるハマスによるテロ攻撃だが、ドローン技術の駆使と地上での奇襲作戦が特徴だった。ガザ地区を囲む国境監視塔や電気系統をドローンからの爆弾投下でユダヤ教の安息日に不意打ちし、通信網も麻痺(まひ)させながら国境壁を破壊、突破したのだ。

戦闘員らは易々とイスラエル域内に車両で侵入、無抵抗の民間人を襲った。多国籍の参加者でにぎわう音楽祭では逃げ惑う250人を超える若者らを虐殺し、SNS上での見せしめも厭(いと)わなかった。外国人を含む150人に上る人質も確保し、各国への牽制(けんせい)を可能にした。

綿密な戦略性を持つハマスのテロ行為は、それを称賛したイラン政府による計画段階からの関与も報道された。9月には、韓国で凍結されていた60億㌦(約9000億円)に上るイランの資産が、人質交換条件の中でバイデン米政権によって解除されていた。共和党からのこの資金融通措置への批判は、テロ攻撃後にそのトーンを各段に強めた。ここでも人質が絡む。

ウクライナとイスラエル。この二正面に対応することになったバイデン政権の状況を踏まえれば、東アジアでは中国による台湾への、北朝鮮による韓国への動きに注目せざるを得ない。台湾では来年1月に総統選、韓国では4月に総選挙を迎える。台湾の与党民進党は頼清徳副総統の当選を狙い、中国はこれを阻もうと画策する。韓国の尹錫悦政権は最大野党「共に民主党」が過半数の現勢力図の逆転を狙い、北朝鮮はその阻止に向け揺さぶりに出ることは必至だ。

こうした中、先月の岸田政権の内閣改造で肯定的評価を得たのが木原稔氏の防衛相任命であった。その期待に応えるべく、木原氏は今月、米国のカウンターパートであるオースティン国防長官を訪ね、台湾有事と南西防衛に向け日米連携のプレゼンスを高めることで合意した。

また「防衛生産と技術基盤」強化担当として和田義明衆院議員を、2014年の大臣補佐官制度スタート以降、初めて防衛相補佐官に任命。26年配備開始予定の国産長射程ミサイルについて、全種類で前倒しの検討を行っていると明らかにした。防衛力強化を急ぐ必要がある。

中国の邦人守る対応を

ハマスによるイスラエルへのテロ攻撃はにわかに、東アジア情勢の緊張感を高めることとなった。国民も自国防衛への意識を一層向上させるべきだ。台湾有事となれば中国内に滞在する10万人の邦人が改正反スパイ法適用によって人質となる可能性を含め、国民の安全に関わるリスク対応にも着手すべきだ。

spot_img

人気記事

新着記事

TOP記事(全期間)

Google Translate »