トラック運転手の不足が懸念される「2024年問題」で、政府はトラックから船舶、鉄道輸送への転換などの緊急対策をまとめた。船舶、鉄道への転換は、二酸化炭素(CO2)削減や省エネに繋(つな)がる。強力に進めるべきだ
政府が緊急対策まとめる
長時間労働を解消するため、24年4月からトラック運転手の時間外労働が年960時間に規制される。これによって人手不足が続く物流業界では、運転手14万人分に相当する輸送量が不足するとみられている。
これに対し、政府は関係閣僚会議を開いて「物流革新緊急パッケージ」をまとめた。①自動フォークリフトの導入などによる荷待ち・荷役時間の削減②共同輸送促進などによる荷物の積載率の向上③鉄道と船舶の輸送の倍増④「置き配」による再配達の削減――などだ。
トラック輸送から船舶や鉄道に切り替える「モーダルシフト」では、今後10年間で輸送量を倍増させる。船舶は20年度時点の5000万㌧から1億㌧に、鉄道は3600万㌧に引き上げる。このため緊急対策には、貨物コンテナの大型化支援などが盛り込まれた。
モーダルシフトで補うのは、不足するとみられる輸送量14万人分中5000人分と全体から見ると大きくない。しかし、長時間労働が問題となっているトラックの長距離輸送に取って代わる分野だけに影響は大きい。貨物列車の場合、需要が大きな区間では1編成当たり650㌧の荷物を輸送できる。これは大型トラック25台分に当たる。
そして鉄道、船舶による輸送は、トラック輸送に比べて環境への負荷が少ない。トラックのCO2排出量は、運輸部門全体の20・4%(19年)を占めている。これに対し、船舶はトラックの5分の1、鉄道に至っては10分の1だ。CO2排出量の減少は、そのままエネルギー消費の削減を示す。
鉄道や船舶への切り替えで輸送コストも削減され、いろいろな面で理にかなっている。政府は総合物流施策大綱(21年度~25年度)で「モーダルシフトのさらなる推進」を掲げている。
ただ実際にモーダルシフトは、あまり進んでいない。その理由は、貨物のトラックへの積み替えなどで輸送時間が延びることがある。また、貨物輸送に関わる人材はトラックの運転手以上に不足している。鉄道や船舶による輸送は、台風や洪水など自然災害が発生した場合、その影響がトラック輸送に比べ大きいことも、荷主を躊躇(ちゅうちょ)させる原因となっている。
しかし、24年問題を一つの跳躍台としてモーダルシフトを強力に進めていくべきだ。何より日本は鉄道網が全国に広がっている。貨物輸送を復活させ、赤字ローカル線の存続にも繋がるよう知恵を絞る必要がある。
再配達減らす工夫を
緊急対策には、再配達を減らすために置き配の増加も重要項目に挙げられた。ネット通販の利用が増える中、配達業者に二度手間をかけさせるのは受け取る側も心苦しい。あらかじめ配達時間を知らせたり、置き配をしてもトラブルが起きたりしないような工夫も必要だ。