【社説】米比合同演習 対中抑止力向上で地域安定を

南シナ海での領有権を巡って中国とフィリピンの対立が深まる中、米比両国の合同軍事演習「サマサマ」が13日までフィリピンで行われている。覇権主義的な動きを強める中国への抑止力を高め、地域の安定につなげなければならない。

南シナ海で緊張高まる

タガログ語で「一緒に」を意味するサマサマと名付けられた演習は、マニラ首都圏や北部ルソン島の南部で実施され、海上自衛隊のほかカナダ、英国が艦船を派遣。オーストラリアやフランス、インドネシア、ニュージーランドなどの海軍将兵も参加している。

フィリピンでは昨年6月にマルコス大統領が就任してから、「親中派」のドゥテルテ前大統による対中融和路線を修正。南シナ海を巡る中国との緊張が高まっている。中国の自然資源省は今年8月、地図の統一規格に当たる2023年版の「標準地図」を発表した。各国が領有権を争う南シナ海のほぼ全域について中国が管轄権を持つ海域としており、中国の主張を反映したものとなっている。

オランダ・ハーグの仲裁裁判所は16年7月、南シナ海の領有に関する中国の主張を退ける判決を下した。それにもかかわらず、今年8月には南シナ海で、中国海警局の船が放水銃でフィリピン沿岸警備隊などの船舶を妨害。9月にはフィリピンの排他的経済水域(EEZ)内で、中国海警局がフィリピン漁船の航行を妨げる浮遊式の障害物を設置するなど強引な海洋進出を進めている。

障害物はフィリピン沿岸警備隊が撤去したが、中国が軍事力を背景に国際ルールを無視することは容認できない。法の支配といった普遍的価値観を共有するサマサマ参加国は「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けて結束すべきだ。

特に沖縄県・尖閣諸島問題を抱える日本にとって、フィリピンの置かれた状況は他人事ではない。中国は尖閣の領有権を一方的に主張し、中国海警船が尖閣沖で領海侵入を繰り返している。中国は尖閣周辺のEEZにも海上ブイを設置した。

日本は中国を念頭にフィリピンや他の民主主義国との連携を深め、海洋警備や安全保障に関する協力を進める必要がある。サマサマでも相互運用性をさらに向上させ、抑止力を強化することが求められる。

一方、9月には台湾・フィリピン間のバシー海峡東方の太平洋上で、中国初の国産空母「山東」を中心とする空母打撃群が演習を実施した。その後、台湾周辺で24時間に100機以上の中国の軍用機が確認されるなど、中国軍の動きが急激に活発化している。

台湾侵攻への警戒強化を

米国は台湾有事の際、台湾に近いフィリピンを拠点に介入する可能性が高い。中国の軍用機や軍艦にバシー海峡を東方に抜けて西太平洋に進入する動きが目立つのは、米国への牽制(けんせい)とみていい。

米国は4月、駐留米軍基地を5カ所から9カ所に拡大することでフィリピンと合意した。中国による台湾侵攻への警戒を強化し、中国に対抗して地域でのプレゼンスを高めるべきだ。

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