【社説】9月日銀短観 本格回復へ過度な円安阻止を

日銀が発表した9月の全国企業短期経済観測調査(短観)は、製造業で部品供給制約の緩和が進んで生産が回復、非製造業ではコロナ禍からの回復が続くなど、大企業を中心に経済が本格回復に向かいつつあることを示した。

だが、海外経済の減速や賃金上昇を上回る物価高騰など懸念要因も少なくない。さらなる物価高を招く円安をこれ以上進行させてはならない。

多くの業種で景況感改善

企業の景況感を示す業況判断指数(DI)は、大企業製造業がプラス9と前回6月調査からプラス4●、2四半期連続で改善した。大企業非製造業では4●改善のプラス27と、1991年11月以来、31年10カ月ぶりの景況感の強さ。コロナ禍からの経済活動の回復を受けて改善は6期連続である。

製造業では16業種のうち9業種で改善した。特に前回8期ぶりにプラス転換した自動車が、さらに10●上昇と大幅に改善。長く半導体不足による生産制約に苦しんできたが、ようやくその制約から解放されつつある。また原材料高が一服するとともに価格転嫁が進み、食料品や石油・石炭製品など幅広い業種で改善につながった。

非製造業ではコロナ禍の行動制限撤廃に伴う回復が続き、12業種のうち8業種が改善。とりわけインバウンド(訪日外国人客)需要増の恩恵を受けた宿泊・飲食サービスはプラス44(前回プラス36)と、2004年の調査開始以来最高となった。

中小企業では、製造業が大企業ほど価格転嫁が進んでおらず景況感は依然マイナス圏だが、非製造業はプラス12と4年6カ月ぶりの高水準となった。

多くの業種で景況感の改善が進んだことを反映して、23年度設備投資計画は大企業製造業で前年度比20・0%増と、高い伸びを示した前回調査(19・3%増)以上の水準を示し、大企業非製造業でも10・1%増と2桁の伸びを維持。経済は大企業を中心に本格回復の様相を呈しつつあると言える。

問題は今後もこうした状況をさらに拡大、発展できるかである。相次ぐ利上げに伴い米欧では経済減速が懸念され、中国も不動産不況を中心に厳しい経済状態にある。海外環境条件は輸出関連企業を中心に要注意であり、回復に水を差す可能性は小さくないであろう。

それ以上に懸念されるのは、最近の円相場、円安の進行である。ニューヨーク市場では一時1㌦=150円台に下落。直後に政府・日銀による介入観測もあり乱高下したが、このところ日米金利差の拡大もあり、じりじりと円安が進行している。

金融政策変更も検討を

円安は輸出には好条件だが、原材料価格の上昇をもたらす。価格転嫁が進む状況で販売価格への上乗せがさらに長引けば、さらなる物価高を招き、実質賃金のプラスは遠のき、個人消費を一段と冷え込ませかねない。

全規模全産業の23年度想定為替レートは135円75銭。現在はこれより10円以上の円安水準であり、政府・日銀は介入と共に金融政策の変更も含め断固とした円安阻止策を検討すべきである。

●=ポイント

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