バイデン米大統領は9月、太平洋島嶼国で構成する「太平洋諸島フォーラム(PIF)」の首脳をホワイトハウスに招いて首脳会議を開催した。シーレーン(海上交通路)の要衝がある南太平洋地域を巡っては、米国と中国が影響力の確保を目指し、各国への関与を強化している。覇権主義的な動きを強める中国に対抗するため、米国は日本やオーストラリアなどと連携し、この地域での存在感を高めていくべきだ。
中国が影響力を拡大
米政府は、来年中にバヌアツに新たな大使館を開設すると発表。日豪などと協力し、海面上昇につながる温暖化対策や、島嶼国をつなぐ海底ケーブルの敷設支援に取り組むことも表明した。また首脳会議に先立ち、バイデン氏は太平洋の島嶼国クック諸島とニウエを国家承認し、外交関係を樹立すると発表。この地域で影響力を拡大する中国に対抗する狙いがある。
中国は南太平洋地域で巨額の経済援助や投資を通じて島嶼国との関係を強化。PIF首脳会議の直後には、米国と締結した防衛協力協定の批准を目指すパプアニューギニアに海軍の訓練艦を派遣する動きを見せた。昨年にはソロモン諸島と安全保障協定を締結しており、中国による軍事拠点化が懸念される。
ソロモン諸島のソガバレ首相は9月、国連総会の一般討論演説で中国の巨大経済圏構想「一帯一路」を称賛する一方、東京電力福島第1原発の処理水放出に対して「即刻停止」を求めるなど中国寄りの主張を展開。PIF首脳会議は欠席し、米国の失望を招いた。中国に取り込まれていることは明白だ。
中国がこの地域で影響力を高めようとするのは、台湾への圧力を強める思惑もある。台湾を国家承認している13カ国中、太平洋島嶼国はパラオ、ナウル、ツバル、マーシャル諸島の4カ国に上る。
かつてはソロモン諸島とキリバスも承認していたが、経済支援を背景とする中国の外交工作によって2019年に台湾と断交し、中国と国交を結んだ。中国が台湾を外交的に孤立させ、統一を目指すことは、台湾の民意を無視するものであって容認し難い。
来年1月には台湾総統選が行われる。台湾と民主主義の価値観を共有する日米豪などは、中国を牽制するためにも太平洋島嶼国との関係を深めていかなければならない。
日本は1997年から「太平洋・島サミット」を3年ごとに開催。太平洋島嶼国のほか豪州やニュージーランドなど19カ国が参加している。
前回は2021年にオンライン形式で開催され、当時の菅義偉首相は年内に計300万回分の新型コロナウイルスワクチンを供与すると表明。ワクチンの輸送車両や保冷庫などコールドチェーン(低温物流網)構築に必要な支援も行うと明らかにした。質の高いインフラ整備など、きめ細かな支援を継続する必要がある。
日本も関与を強めよ
日本は、南太平洋地域の安定が「自由で開かれたインド太平洋」につながることにも留意して関与を強めるべきだ。






