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【社説】核戦力高度化 身勝手な北の独裁維持政策

北朝鮮の最高人民会議(国会に相当)が、核兵器を背景とした安全保障政策「核武力政策」を憲法に明記すると決めた。

核・ミサイル開発の加速が懸念される。日本は米韓両国との連携を深め、北朝鮮への圧力を強化すべきだ。

憲法への明記を決定

最高人民会議は「責任ある核保有国として戦争を抑止し、地域と世界の平和を守るために核戦力を高度化する」との文言を憲法に盛り込むことを全会一致で決定した。国際社会の安全を脅かしてきた北朝鮮が「世界の平和を守る」というのは詭弁(きべん)以外の何物でもあるまい。

北朝鮮は2012年の憲法改正で「核保有国」としての地位を明記。昨年の最高人民会議では核使用を法制化し、先制攻撃を辞さない構えを見せていた。核保有を既成事実化し、国際秩序を揺るがすことは到底容認できるものではない。

演説した金正恩朝鮮労働党総書記は、核戦力を「質・量ともに急速に強化する」と強調。核兵器製造の飛躍的拡大や、核攻撃手段の多様化推進を「重要課題」として列挙し、核兵器の実戦配備を進めるよう指示した。また「帝国主義者の核」が存在する限り「核保有国としての(北朝鮮の)現在の地位を変更したり譲歩したりしてはならない」と主張した。

しかし正恩氏が核保有に固執するのは、決して北朝鮮国民のためではない。韓国国防研究院が昨年にまとめた推計によれば、北朝鮮の核開発の費用で食料不足量の4年分を購入できる。国民が飢餓に苦しむ中で核開発に狂奔するのは、正恩氏を中心とする独裁体制を守るためにほかならない。国民を顧みず、周辺国を危険にさらす核政策は身勝手極まる。

正恩氏は今月、ロシアを訪問してプーチン大統領と会談し、軍事協力について協議した。国連安全保障理事会の常任理事国であるロシアは、安保理決議に違反して弾道ミサイル発射を繰り返す北朝鮮を擁護し、昨年5月も安保理で中国と共に拒否権を行使して制裁強化決議案を廃案に追い込んだ。安保理を機能不全に陥れているロシアとの関係強化が、今回の「核武力政策」の憲法明記決定につながったとみていい。

一方、正恩氏は日米韓の安全保障協力について「アジア版NATO(北大西洋条約機構)」が構築されたと述べて「実質的な最大の脅威だ」と強調した。日米韓の連携強化への警戒を強めていることがうかがえる。

韓国軍は創建から今年で75年を迎えたことを記念し、ソウル市中心部で10年ぶりに大規模な軍事パレードを行った。記念式典で演説した尹錫悦大統領は、北朝鮮が核を使用すれば米韓同盟の圧倒的な対応で「政権を終わらせる」と牽制(けんせい)して対決姿勢を鮮明にした。

日米韓は平和への尽力を

民主主義の価値観を共有する日米韓3カ国は、北朝鮮はもちろん、中国やロシアの脅威に対処して地域の平和と安定の維持に尽力すべきだ。

これとともに、日本は防衛力向上に向けて反撃能力(敵基地攻撃能力)の整備も着実に進める必要がある。

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