【社説】東芝非上場へ 再建に向け混乱に終止符を

国内投資ファンド、日本産業パートナーズ(JIP)のグループが東芝の株式を対象に実施したTOB(株式公開買い付け)が成立した。年内にも上場廃止となる。

東芝は再建に向け、2015年の不正会計問題発覚から続く経営の混乱に終止符を打たなければならない。

株主構成一新で立て直し

日本を代表する電機メーカーだった東芝だが、不正会計問題の発覚後には経営陣が一斉に退陣するなど迷走。米原発子会社の経営破綻による債務超過の解消のために「物言う株主」と呼ばれる海外投資ファンドから出資を受けた結果、有望事業への投資で成長を目指す経営陣と、短期的な株主還元を求める海外ファンドが対立するなど混乱に拍車が掛かっていた。

こうした事態に終止符を打つため、東芝はTOBに賛同して株主構成を一新し、事実上の親会社となるJIPの傘下で経営を立て直す道を選んだ。非上場化による環境整備の後は、経営戦略の実効性が問われよう。

東芝の島田太郎社長は収益の柱としてデータサービス事業の強化を掲げている。エネルギー事業やインフラ構築で培った技術にデジタル技術を組み合わせ、脱炭素社会の実現などに貢献する経営戦略を推進する。30年度の売上高目標は22年度の1・5倍の5兆円とした。

しかし、東芝は医療機器やメモリー半導体など稼ぎ頭の事業を多数手放している。TOBに伴う巨額の借り入れで財務基盤も弱まる中、いかに戦略推進のための資金を捻出するかが大きな課題となる。非上場企業となる東芝が、優秀な人材を集められるかも不透明だ。

一方、東芝は原発や量子暗号などの技術を有しており、経済安全保障上重要な企業である。原発事業を巡っては、廃炉、再稼働、新設の全ての領域で欠かせない存在となっている。従来の原子炉と比べて安全性が高いとされる「革新軽水炉」の実用化も目指している。

量子暗号は、盗聴やハッキングが理論上不可能とされる。スーパーコンピューターの性能をはるかに上回る量子コンピューターが30年代にかけて実用化されると、現在の暗号は破られるリスクが高まる。

東芝は英中部ケンブリッジに量子技術に関する事業拠点を開設した。量子暗号通信の開発から専用装置の製造までを一貫して手掛け、商用化に向けた取り組みを加速させる。

今回の東芝の買収総額は約2兆円に上る。JIPのほか、オリックスや半導体大手のローム、中部電力など国内企業20社以上が出資し、メガバンクなどが融資する。JIPを中心とする「国内連合」には、外資による東芝の技術の流出を避けたいとの思いもあるのだろう。

ガバナンスの強化を

島田社長はTOB開始を発表した記者会見で「世の中に本当に貢献できる会社として再び成長していくと強く信じている」と語った。

そのためにも、不正会計問題などで株主や消費者の信頼を損なったことを改めて猛省し、ガバナンス(企業統治)の強化に全力を挙げるべきだ。

spot_img