岸田文雄首相が内閣改造と自民党役員人事を行った。党では麻生太郎副総裁、茂木敏充幹事長、萩生田光一政調会長、改造内閣では松野博一官房長官らを続投させ、派閥均衡を念頭に政権の枠組みを維持して基盤の安定を優先させた。
高揚感なき延命戦略
岸田首相は「適材適所でバランスに配慮した」と言うが、来年秋の総裁選再選を強く意識した人事であることは明らか。延命戦略であるため高揚感は全く感じられない。眼前に控える国家の難局に的確に対処できるのか疑問だ。
今回の人事の特徴は、低迷している政権支持率をアップさせることに腐心した点だ。保守派から親中派と批判され米国からも警戒された林芳正氏を外相ポストから外し、週刊誌などでスキャンダルが指摘されている木原誠二官房副長官を自民党幹事長代理に横滑りさせた。これで政権批判のトゲを抜くことができると判断したのだろう。一方で、小渕優子組織運動本部長を党四役の選対委員長に起用。5人の女性を入閣させ11人の初入閣で刷新感を出そうと図った。
同時に配慮したのが党総裁選に向けた布石だ。首相は、「ポスト岸田」の有力候補とされる茂木幹事長を留任させ、茂木派で力を付けてきた小渕氏を抜擢(ばってき)し、茂木派の力を二分させて茂木氏の力を削(そ)ぐことを狙った。また、側近の木原副長官を茂木氏の代理として党内に配置し目付け役にした。他の総裁選候補者とされる高市早苗経済安全保障担当相、河野太郎デジタル相を再び政権内に取り込み最大派閥の安倍派にも配慮した。
だが、問題は山積する国家の課題の解決を優先にしたのか疑問であることだ。組閣中に北朝鮮からの弾道ミサイル発射が伝えられ、中国の軍事的脅威が増大している中、初入閣の木原稔防衛相が先頭に立てるのか。
故安倍晋三元首相の遺志を継承するとして憲法改正への決意を表明した首相だが、自民党の憲法改正実現本部の事務総長で衆院憲法審査会与党筆頭幹事の新藤義孝氏を経済再生担当相に起用した。急がれる改憲の機運をどう盛り上げるのか。
党四役就任の記者会見で、党の見解を二分したLGBT理解増進法に関する質疑が全くなかったことも問題だ。保守派のコアの中には同法を成立させたことに強い批判がある。今回、文部科学相になった盛山正仁氏は、選択的夫婦別姓制度の導入や同性婚を可能とする法改正について賛成の立場だ。文科行政が歪(ゆが)められないか懸念される。
首相が今年の年頭会見で、看板政策として打ち出した「異次元の少子化対策」についても熱意が感じられない。こども政策・少子化対策担当相に就任した加藤鮎子氏は「私も育児をしている。子供たちのために頑張りたい」と語る。だが、子育てが十分にできる経済的な政策の充実が少子化対策の主要なもののはずだ。
羅針盤を兼ね備えよ
物価高など目前の経済情勢には即刻対応しなければならない。だが、長期的視点を持った羅針盤を兼ね備えなければ国家の難局を乗り越えられないことを肝に銘じるべきだ。







