ローマ教皇フランシスコが歴代教皇として初めてモンゴルを訪問した。200人の大使節団が組まれた。
ミサで中国の信徒を激励
モンゴルは、ソ連(当時)の影響を強く受けた20世紀の社会主義体制で宗教が弾圧された。1990年の民主化を経て92年の新憲法で信教の自由を保障してから30年以上になるが、カトリック信徒自体は1450人と少ない。それでもれっきとした民主主義国家に転換したモンゴルを教皇が訪問し、信教の自由の価値観を享受、発信する意義は地政学的に大きい。
聖職者による子供への性的虐待など、カトリック教会の威信が低下する欧州を背に、アジアでの信徒のケアと拡大にバチカンの意識が向いている表れだ。とりわけモンゴルと地続きの中国国内には、公式発表で600万人、一説に1000万人とも言われる信徒がいるが、信教の自由が抑圧された状況の下にある。教皇はモンゴルの全信徒参加のミサで、前現2人の香港教区長を壇上左右に招き、中国の信徒に向け、良き市民、良きキリスト教徒であれと激励した。
報道によると、ミサには中国から一般信徒らも密(ひそ)かに参加していた。しかし、カトリック司教らは派遣されなかった。2018年、バチカンと中国は、長年対立していた司教の任命権について、中国がローマ教皇の国内的地位を認める条件で、バチカンが中国による司教任命を追認すると暫定合意した。ただ、別体系にある香港を除いた中国からの司教不参加は、暫定合意の現実的中身の希薄さを表す。
ローマ教皇は立法、行政、司法の三権の長であり、各国訪問は外交の意味を兼ねる。バチカンはアジア地域で中国、ベトナム、ラオス、北朝鮮と国交がない一方、欧州で唯一、台湾との外交関係を有する。バチカンが中国への接近を念頭に、モンゴルと関係を強化することは、台湾を含む東アジアの平和と安定にも影響を及ぼす。教皇によるメッセージを受け、中国外務省は「バチカンとの関係改善に常に積極的」と発信。台湾外交部は「カトリック教徒にもっと多くの自由を与えるよう中国政府に期待する表れ」と表明した。
教皇はモンゴルでのミサに先立ち、仏教、シャーマニズム、イスラム教、ユダヤ教、神道、ロシア正教などの代表者と同時対話の機会を持った。現教皇自身が力を入れてきた政策的行動だが、モンゴルでの諸宗教の対話は特別な意味がある。モンゴル人が共通に誇り、アイデンティティーの拠(よ)りどころとするチンギス・ハーンが、かつて広大なユーラシアの諸部族を統一した時の宗教寛容政策に重なる。
この景色を踏まえたミサであればこそ、モンゴルのカトリック信徒らは「モンゴルは昨日の北朝鮮」の自覚を新たに、北朝鮮の全体主義からの解放、また中国国内の信教の自由のために熱心に祈ったことだろう。
価値観発信の役割に期待
諸宗教との対話、また1000万人に及ぶ中国の信徒への激励メッセージを含むローマ教皇のモンゴル訪問の成果と共に、モンゴルが民主化で取り戻した信教の自由の価値観を発信する役割を担うことに期待する。







