【社説】ジャニーズ性加害 TV沈黙の責任不問に付すな

ジャニーズ事務所の創始者、故ジャニー喜多川氏による所属タレントへの性加害に、見て見ぬふりをしてきたテレビ局の責任は重大だ。テレビ局の沈黙が、少なく見積もっても数百人に上るまで被害者を増やした。その責任を不問に付すわけにはいかない。

民放に真摯な反省なし

この問題で同事務所は記者会見して性加害があったことを認め、藤島ジュリー景子社長の引責辞任、東山紀之氏の新社長就任を発表。藤島氏は「被害者への補償を責任を持って全うする」と述べた。東山氏はジャニー氏の性加害を「人類史上、最も愚かな事件」と断じ、補償・救済について「長い道のりと覚悟している」と語った。

同事務所が委嘱した外部専門家による再発防止特別チームの報告は「マスメディアからの批判を受けることがないことから、ジャニーズ事務所が自浄能力を発揮することもなく隠蔽体質を強化し、その結果、被害が拡大した」などと指摘。国連人権理事会の作業部会でも「日本のメディア企業は数十年にもわたり、この不祥事のもみ消しに加担」と報告された。

この問題については、1999年に週刊文春が告発記事を掲載。ジャニー氏と同事務所は文春を名誉毀損(きそん)で提訴したが、最高裁は2004年にジャニー氏による性加害を認めている。

にも拘(かか)わらず、マスメディアとくにテレビ局はこの事実をきちんと報道しなかった。男性アイドルグループほか人気タレントを多数抱える同事務所への忖度(そんたく)によるものとみられる。

人気の高い所属タレントを出演させれば、高い視聴率が期待され、広告収入も確保できる。視聴率至上主義のテレビ局と絶大な力を持つ同事務所の馴(な)れ合い関係によって、テレビ局は口を閉ざした。ジャニー氏による性加害は、最高裁判決以降も続いたとみられ、テレビ局の沈黙が犯罪を放置・拡大させた。

テレビ局は公益のため、公共の電波を使用する特別の権利を付与されたメディア、企業である。そのようなメディアが「人類史上、最も愚かな事件」を拡大させた責任はあまりに重大だ。

記者会見を受け、NHKは「当時、この問題について認識が薄く、その後も、取材を深めてニュースや番組で取り上げることはありませんでした。多くの未成年者が被害にあう中で、メディアとしての役割を十分に果たしていなかったと自省しています」とし、同事務所所属タレントの起用については検討していくとしている。

一方、民放各テレビ局は、マスメディアの沈黙が被害を拡大したとの指摘について、異口同音に「重大に受け止める」とし、「人権の尊重」を語っているが、真摯(しんし)な反省の言葉はない。事態をどれほど深刻に捉えているか疑問だ。

「人権尊重」は本当か

事実、民放では同事務所所属タレントの出演について、現時点で「変更する予定はない」(日本テレビ)など、検討する姿勢すらない。事務所との馴れ合いは一向に改まっていない。民放の「人権尊重」の言葉が本当かどうか、視聴者が見ていることを忘れるべきではない。

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