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【社説】秋本議員逮捕 再エネ汚職の全容解明を

「政治とカネ」を巡る不祥事がまた発覚した。今度は、再生可能エネルギー拡大の切り札でもある洋上風力発電事業に絡む受託収賄容疑で、衆院議員の秋本真利容疑者が逮捕された。

国会議員という立場で、私腹を肥やす場に国会を利用していたとすれば国民への裏切り行為である。捜査当局による汚職疑惑の全容解明を求めるとともに、政策が歪(ゆが)められていなかったか国会での検証も必要だ。

公の場での釈明なし

洋上風力発電事業は、2050年の脱炭素社会実現に向けた有望な再エネの拡大施策として注目され、岸田政権も力を入れてきた。「脱原発」「再エネ」を掲げ、自民党の再生可能エネルギー普及拡大議員連盟の事務局長を務めた秋本容疑者は、その政策推進の旗手として国会で関連質問を繰り返してきた。

ところが、東京地検特捜部は、秋本容疑者が電力関連会社「日本風力開発」の事業参入に有利な国会質問をした見返りに、賄賂を受け取ったと判断したのである。明らかになっている金額の総計は6000万円余り。3000万円以上が競走馬の購入、飼育代で、馬主登録をする際に無利息、無担保で3000万円を借りたという。金銭の受け取りは議員会館でも行われたとされている。

疑惑の発覚後、秋本容疑者はすぐに外務政務官を辞め、自民党を離党してしまった。そのため、公の場での釈明は一切ないまま逮捕された。自らにかけられた疑惑に説明責任を果たさず雲隠れしてしまうのは国会議員としての資質を明らかに欠く。

さっさと離党を許し「捜査の推移を見守りたい」(茂木敏充幹事長)という自民党の姿勢も無責任に映る。まるで他人事のようなコメントだ。離党させる前に秋本容疑者と会って説明責任を果たすよう説いたのか。家宅捜索後、逮捕まで約1カ月もあったが、離党者だから関係はないのか。この件で政権支持率に悪影響が及ぶという理由で説明もさせずに離党させたのであれば、国民軽視であり、言語道断である。

贈賄側とされる会社は千葉県や秋田県など3海域同時入札での参入を目指していた。しかし政府の公募の第1ラウンドに失敗した後の昨年2月、容疑者は入札の評価基準を見直すよう国会質問で要求。その後、新たな評価基準が導入された。それが同社に有利な基準とされ、会社側も「国会質問の謝礼だった」と贈賄を認める供述をしているという。秋本容疑者は弁護士を通じて賄賂性を否定している。

ただ、国会質問は国会議員の重要な職務権限だ。特捜部の見立ての通りであれば、国会での職権を使ってカネを自らの懐に入れるという卑劣な行為であり、決して許されない。国会審議に対する信頼を損なった責任もあり、議員辞職に相当する。

他議員疑惑の有無確認も

岸田文雄首相は「国会議員は改めて襟を正し、国民のために緊張感を持って職務に邁進しなければならない」と強調した。国会では、信頼回復のために可能な限り事件の検証をするとともに、再エネに絡む利権の疑惑が他の議員に及ぶことはないかの確認作業もしてほしい。

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