北朝鮮が「長距離戦略巡航ミサイル」2発の発射訓練を行った。米韓空軍の「実射撃訓練」に対抗したもので、戦術核攻撃を想定しているという。日米韓は核抑止力の向上を急がなければならない。
建国75年へ国威発揚狙う
朝鮮中央通信によると、2発は平壌北方の清川江河口から黄海に向けて発射された。核弾頭を模した試験用弾頭を装着し、8の字状の軌道に沿って1500㌔を約2時間かけて飛行。目標とする島の上空で空中爆発し、任務を正確に遂行したとしている。
北朝鮮は8月にも事実上の弾道ミサイル発射である軍事偵察衛星の打ち上げを行った。これは失敗したが、今回のミサイル発射も建国から75年の記念日である9月9日に向けて国威を発揚する狙いがあろう。
さらに、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記は海軍に核を配備する方針を表明した。開発を進める潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)や核魚雷「核無人水中攻撃艇」、潜水艦や艦艇から発射する戦略巡航ミサイルなどへの戦術核搭載を念頭に置いているとみていい。連携を強化する日米韓に対抗するため、地域の安定を脅かすことは断じて容認できない。
8月に米国で行われた日米韓首脳会談では、自衛隊と米韓両軍の合同訓練を毎年定期的に実施することで一致した。米韓は8月、朝鮮半島有事を想定した定例の合同演習を行い、演習期間中には日米韓のイージス艦によるミサイル防衛訓練も実施された。連携を誇示し、北朝鮮への圧力を強化する必要がある。
ただ北朝鮮が発射した巡航ミサイルは、レーダーによる探知が難しい。日米韓は合同訓練を重ねるとともに、核抑止力の向上を図ることも欠かせない。
米韓は4月の首脳会談で、米国の核を含む戦力で韓国を防衛する「拡大抑止」の強化を明記した「ワシントン宣言」を発表。「核協議グループ(NCG)」を新設し、核抑止に関する話し合いを行っている。
一方、サリバン米大統領補佐官(国家安全保障担当)は6月、拡大抑止に関する協議を将来的には日米韓で行う可能性があると指摘した。3カ国の連携と安全保障をさらに強化するため、検討を進めるべきだ。
核の脅威を増大させているのは北朝鮮だけではない。ウクライナ侵略を続けるロシアのプーチン大統領は、核兵器を使う可能性に繰り返し言及するなど脅しをエスカレートさせている。中国も核戦力を拡大しており、米国防総省によれば2035年までに約1500発の核弾頭を保有する可能性がある。核の先制不使用政策を維持し、非核保有国には使用・威嚇を行わないことを宣言している中国だが、台湾侵攻を念頭に「日本例外論」の採用を検討しているとの見方も出ている。
非核三原則の見直しを
日本は唯一の被爆国であり、核への拒否反応が強い。岸田文雄首相は非核三原則を堅持するとしている。だが日本を守り、悲惨な核戦争を防ぐには、核抑止力の強化が欠かせない。そのためには、三原則の見直しも含めた核政策が求められる。