【社説】プリゴジン氏死亡 旧ソ連を思わせる「粛清」

ロシアの民間軍事会社ワグネルの創設者エブゲニー・プリゴジン氏が、自家用ジェット機の墜落で死亡した。

墜落は機上で爆弾が炸裂(さくれつ)したのが原因とされ、6月に武装反乱を起こしたプリゴジン氏が、プーチン大統領に「粛清」されたとの見方が強まっている。裏切り者を決して許さず、命を奪う非情さに慄然(りつぜん)とさせられる。

6月に武装反乱起こす

墜落現場で収容された遺体のDNA型鑑定の結果、プリゴジン氏の死亡が確認され、プーチン氏は遺族に哀悼の意を表明。ウクライナ侵略に「貢献」したものの、武装反乱を起こしたプリゴジン氏の功罪を「故人」として振り返った。

プリゴジン氏が編成した部隊は5月、ウクライナ東部ドネツク州の要衝バフムトを攻略するなどの戦果を挙げた。だが、この頃から軍や国防省への批判を強め、6月にはモスクワへ反乱軍を仕向けた。反乱は1日で収束してプリゴジン氏は免責されたが、プーチン氏の権威を失墜させたと言えよう。

墜落した自家用ジェット機はプリゴジン氏の搭乗前、約1カ月間使用されず、モスクワの空港に止められていた。この間に爆弾が仕掛けられた可能性もある。バイデン米大統領は、プリゴジン氏が「粛清」されたとの見方に対して「ロシアではプーチンが背後にいないことは多くない」と述べた。

プーチン政権による「粛清」だと疑われるのも無理はない。2018年には英南部ソールズベリーで、元ロシア情報機関員が軍用神経剤ノビチョクで暗殺されかかる事件が発生。06年には、プーチン政権を批判した元ロシア情報機関員が、ロンドンで放射性物質ポロニウムを盛られて死亡した。いずれの事件も英政府は、ロシアが関与したと断定している。

リベラル派の記者や活動家に危害が及ぶケースも多い。06年には、チェチェン共和国の人権侵害を追及した独立系紙の女性記者アンナ・ポリトコフスカヤさんがモスクワで射殺された。反体制派指導者のアレクセイ・ナワリヌイ氏は20年、ノビチョク系とされる物質で毒殺されそうになり、その後プーチン政権の弾圧で収監された。ナワリヌイ氏は今回の墜落について「プーチン氏が計画したテロだ」と主張している。

人命軽視も甚だしいと言わざるを得ない。来年3月に大統領選を控える中、プリゴジン氏を「見せしめ」にして政権を守り、国内を引き締める狙いがあるのだろうが、極めて異様である。ただベラルーシ滞在中のワグネル戦闘員からは、プーチン政権への報復を求める声が上がっており、国内情勢が緊迫化する恐れもある。

戦争長期化への覚悟を

国際法に違反するウクライナ侵略や国内の人権弾圧など、現在のプーチン政権は旧ソ連の強権体制をそのまま引き継いでいるかのようだ。

「粛清」を徹底するプーチン政権の手法を見れば、ウクライナ侵略でも戦闘能力が著しく低下しない限り、撤退する可能性は低いとみていい。ウクライナを支援する西側諸国には、戦争長期化への覚悟が求められる。

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