原発から出る使用済み核燃料を一時保管する中間貯蔵施設の建設を巡り、山口県上関町の西哲夫町長は、中国電力と関西電力の共同開発に向けた調査の受け入れを表明した。受け入れを歓迎したい。
中国電が調査申し入れ
中国電は上関原発の建設を町内で進めていたが、2011年の東京電力福島第1原発事故を機に準備工事が中断。原発関連交付金が減る中、地域振興策の提案を求められた中国電が、上関原発用地内での中間貯蔵施設建設に向けた調査の実施を申し入れていた。ただ、金銭面で単独での建設は難しいとして関電に協力を求めていた。
中間貯蔵施設は、使用済み核燃料を再処理工場に持ち込むまでの間、一時保管する施設だ。現在のところ、国内では唯一、東京電力と日本原子力発電が青森県むつ市に、両社の原発から出る使用済み核燃料を50年間貯蔵できる施設を建設している。
全国の原発では使用済み核燃料を敷地内のプールで保管しているが、今年3月末時点で保管可能な量の8割近くに達しているという。中間貯蔵施設の必要性が高まる中、上関町の調査受け入れを評価したい。
中国電は今後、ボーリング調査などを行い、「適地」と判断されれば施設建設に向けた同意を町に求める。町内には原発建設に反対してきた住民も多く、中間貯蔵施設に関しても町議会で議員10人中3人が反対を表明した。中国電は丁寧な説明で住民の理解を得る必要がある。
ただ反対の背景には、使用済み核燃料を再利用する「核燃料サイクル」政策が進んでいないことがある。地元では事実上の最終処分場となることへの懸念の声が高まっている。
青森県六ケ所村の再処理工場は、新規制基準への対応や相次ぐトラブルなどで、着工から30年たっても完成していない。工場を建設する日本原燃は、竣工(しゅんこう)時期を24年度上期としている。着実に完成させることが、中間貯蔵施設への理解が広がることにもつながるだろう。
資源の多くを輸入に頼る日本にとって、エネルギー安全保障の観点からも核燃料サイクルは不可欠だ。福島の事故を受け、国民の間に原発への不安が根強いのは確かだが、現在は世界で最も厳しいとされる新規制基準に適合したものだけが稼働している。運転時に温室効果ガスを排出せず、出力の変動も少なく、さらに燃料の再利用も可能な原発は極めて重要な存在だ。
だが再処理工場の処理能力には限度があり、中間貯蔵施設がなければ原発の稼働にも支障が生じかねない。上関町の調査受け入れが核燃料サイクル確立への一歩となることが願われる。
最終処分場も欠かせない
一方、使用済み核燃料から再利用するウランとプルトニウムを取り出した後に残る高レベル放射性廃棄物の最終処分場も核燃料サイクルには欠かせない。現在は北海道の2町村で選定に向けた「文献調査」が行われているが、長崎県対馬市議会の特別委員会も調査受け入れを求める請願を採択した。ただ、正式決定には市長の同意が必要となる。市長には大局的な判断を求めたい。