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【社説】山の日 山で豊かな感性を育もう

きょうは「山の日」で、山に親しみその恩恵に感謝する日。今年で第7回を迎え、記念全国大会が沖縄県で行われる。

今年は沖縄で全国大会

会場は「やんばる」と呼ばれる沖縄本島最北端の国頭村、同北部西岸にある大宜味村、同北部東海岸にある東村。そして石垣島の南西に点在する16の島々から構成される竹富町である。

沖縄県の山々は、標高こそ高くないが、豊かな森林があり、川を通してその森林が海へつながり、世界に誇るサンゴ礁の海を育んでいる。

「やんばる」にはヤンバルクイナやノグチゲラ、竹富町の西表島にはイリオモテヤマネコなど固有種が数多く生息し、生物多様性に富んだ地域だ。「東洋のガラパゴス」とも呼ばれてきた。2021年には「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」が世界自然遺産に登録された。

プレイベントとして7月17日の「海の日」には、西表島で「ピナイサーラの滝トレッキング」が開催され、参加者はカヌーや山歩きを楽しんだ。大会前日には、歩く旅の普及を目指す日本ロングトレイル協会が、旅の起終点道標を国頭村の辺戸岬に設置し、除幕式が行われた。

NHKBSでは7月に「南の島の“海から山へ”~石垣島 西表島~」が放映された。沖縄を舞台にしたユニークな登山番組で、登場したのは海洋冒険家の八幡暁さん。

シーカヤックを使って海を移動し、島にたどり着くとカヤックを降りて引き上げ、沢を遡行して頂上を目指す。このような珍しいスタイルの登山は、島々で構成される沖縄ならではのもの。石垣島のウマヌファ岳をはじめとして三つの島の三つの山が登場した。

ウマヌファ岳は地元でもあまり知られておらず、遡行した佐久田川を登る人もまれ。しかも、八幡さんは素足にサンダルを履いていたので驚かされた。熟練しているためか、足指の動きで岩をつかみ、動きもスムーズ。涼しそうでよかった。明るく小さな渓流だった。

ところで、山の日を祝日にする運動を推進したのは日本山岳会だった。機関誌「山岳」第百十一年(2016年)にその記録が掲載されている。これを読むと推進期間に会議やフォーラム、シンポジウムなどが行われ、諸論文が発表され、多様な視点から山が見詰め直されたことが分かる。

自然環境の保全、地域の特質を生かした森林づくり、防災、ふるさと回帰、安全登山、健康づくりなど。日本人が山の民だということも確認された。

それらを集約したのが「山に親しみその恩恵に感謝する」という言葉だ。自然を大切にする思想を次世代につないでいく重要性も強調された。その原点は人の感性にあり、それを育んでいくものこそ、幼児期からの自然体験の数々だという。

問われる日本人の生き方

米国の海洋生物学者レイチェル・カーソンが本のタイトルにした「センス・オブ・ワンダー」。若者の間でこの感性は今、育まれているのだろうか。むしろ自然に疎遠な子供の方が多いのではないか。山の日は日本人の生き方を問うている。

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